3年前の重大事故公表せず/川崎市立川崎病院、救急搬送の患者が高次脳機能障害

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3年前の重大事故公表せず/川崎市立川崎病院、救急搬送の患者が高次脳機能障害

 川崎市立川崎病院で二〇〇五年六月に救急搬送された四十代の男性が人工呼吸器の不具合から低酸素状態に陥り高次脳機能障害を負う重大事故が発生していたことが十八日、分かった。〇八年四月に別の病気で亡くなり、市と遺族との間で九千五百六十万円の損害賠償でこのほど和解が成立。市が和解案を議会に上程することから、三年を経てようやく公表した。

 当時市内在住だった会社員の男性は〇五年六月三日、内臓疾患のために出血し腹膜炎を起こして同病院の救急外来に運ばれた。手術は午前三時すぎに無事終了し、集中治療室(ICU)で午前四時四十分に人工呼吸器を装着。その二十分後に血圧と脈拍数が低下、皮膚が紫色に変色するチアノーゼの症状が出て、首のあたりに空気がたまる皮下気腫になっていたという。

 当時、ICUでは医師らが容体を見守っており、異変に気付いて人工呼吸器を外して手動式に切り替え、昇圧剤などを投与して改善したものの、男性は高次脳機能障害の後遺症を負った。その後のリハビリによって会話は可能になったが、五分前の記憶を失う状態が続き、働くことができなくなり、日常生活でもベッドでの生活を余儀なくされたという。

 男性の状態から、呼吸器が示す空気量(一回の吸気四百ミリリットル)をオーバーする空気を肺に送り込んでいた可能性が高いという。問題の呼吸器はスウェーデンのシーメンス社製で〇五年五月中旬に同病院で使用した際には正常に作動。その後、空気が通るユニット部分などを交換し、臨床工学技士などにより調整してあるはずだったが、調整済みの札は張られていたものの、署名がなかったことに気付かないまま男性に装着。装着前に点検するルールもなかった。

 本人と家族は病院側と話し合いを続けていたが、今年三月十四日に東京簡易裁判所に二億三千八百二十五万円の損害賠償請求調停を申し立てた。九月二十五日に遺族と和解が成立した。

 川崎病院は再発防止のため、人工呼吸器の点検シートへの記入や使用中の点検、使用前にテスト肺に接続して動作確認を行うなど事故直後から明確なルールを定めた。長秀男・同病院長は「重大事故を起こしてしまい大変、申し訳ない」と謝罪した。

◆高次脳機能障害 脳卒中などの脳血管障害や交通事故による脳外傷、呼吸停止で脳に一時的に酸素が供給されない低酸素脳症により引き起こされる。言語、記憶の機能に障害が起きた状態。比較的古い記憶は保たれているのに新しいことは覚えられない、感情や行動の抑制が効かなくなるなど精神・心理的症状が表れ生活に支障を来すようになる。外見上では分かりにくいため、周囲の理解が得られにくいとも言われている。

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