18日午前10時15分ごろ、さいたま市南区別所2、元厚生事務次官、山口剛彦さん(66)方で、男女2人が胸や腹から血を流して死亡しているのが見つかった。埼玉県警は殺人事件と断定、浦和署に捜査本部を設置した。2人は山口さんと妻美知子さん(61)と確認された。
県警によると、2人は玄関を入ってすぐの場所に足を外へ向け、あおむけで倒れていたという。男性はシャツにズボン姿、女性は部屋着にスカートをはいており、外出用の上着などは着ていなかった。服の上から刃物で刺されたとみられる。玄関から外へ血が流れ出ているのを近所の住人が見つけて110番した。
山口さん夫婦には息子が2人いるが、現在は夫婦の2人暮らしだという。
隣の家に住む女性(59)によると、18日午前5時半ごろ、新聞を取ろうとして外を見ると、山口さん方の居間の電灯がついていたといい、女性は「山口さんは普段はこんなに早起きではないので、ずいぶん早いなと思った」という。また、前日の午後6時半ごろに雨戸を閉める際は「台所に電灯がついていたけれど、シーンと静かで、雨戸も開けっ放しだった」と話していた。
一方、さいたま市消防局によると、18日午前10時23分に山口さん方の近くに住む男性から「けが人が2人発生した」と119番があった。救急隊が駆けつけたが、2人は既に死亡しており、搬送しなかったという。
現場はJR埼京線武蔵浦和駅の北西約500メートルにある閑静な住宅街。山口さん方は狭い路地を入った場所に玄関があり、路地の入り口には県警の立ち入り禁止のテープが張られ、周辺住民が不安そうに見つめていた。
山口元事務次官は東大法学部を卒業後、1965年に厚生省に入省、年金局年金課長、年金担当の官房審議官、年金局長などを経て、96年から厚生事務次官を2年9カ月担当した。その後、社会福祉・医療事業団と、事業団が組織変更した独立行政法人福祉医療機構の理事長を08年3月まで務めた。現在は全国生活共同組合連合会理事長。年金課長時代に85年の年金制度大改正を手がけ、省内では「年金制度のスペシャリスト」と呼ばれていた。
【浅野翔太郎、小泉大士】
毎日新聞 2008年11月18日 12時10分(最終更新 11月18日 17時16分)