互いに出方を探り合う党首会談だった。衆院解散を先送りしたい麻生首相と補正予算案提出を迫る小沢民主党代表。この期に及んで首相はなぜ言葉を濁す。駆け引きしている時では、もはやない。
臨時国会の会期末へ二週間を切った段階で、麻生太郎首相と民主党の小沢一郎代表が会談した。
唐突感は否めないが、終盤国会をどう運営するか二大政党党首が協議の場を持つのは理解はする。問題はそこで何が決まるかだ。しかし会談は事実上の物別れに終わった。
会談のきっかけは、先週末の首相のワシントンでの発言だ。記者団に衆院解散の時期をめぐって、二〇〇九年度予算の年度内成立を優先させる意向を表明し、来春以降との考えを示唆した。
緊急経済対策を盛り込んだ第二次補正予算案の提出時期も明言しなかった。このため、小沢氏は予算案を今国会に提出するよう強く迫った。首相が景気最優先という以上、麻生政権としては早急に処理するのが当然だろうという考えに基づく。筋は通っている。
首相は「いつ出せるかは今の段階では明快に答えられない。出せるように努力している」とだけ答えた。ここはみんなが首をひねるところだ。補正予算案を提出すれば、国会会期の延長が避けられなくなる。先送りしたい解散に追い込まれかねないことを恐れてのことであれば、情けない。
日本の景気後退が鮮明になっている。雇用不安も広がっている。「政局より政策」といい、十分な景気対策を盛り込んだというのであれば、やはり早急に提出し、審議に付すべきである。
明言を避ける首相に小沢氏は、参院与野党が合意していたインド洋での給油継続法案の「十八日採決」には応じられないと主張。民主党は参院審議の拒否方針を固めた。首相が「全然関係ない話だ。合意が一方的に破棄されるのは納得しかねる」と語ったのは、分からないでもない。
事前準備もなしに行われた初の党首会談は、互いの言い分をぶつけ合うだけだった。国民には駆け引きが過ぎると映ったのではないか。小沢氏は与党が求める国会でのオープンな党首討論を拒み続けてきた。本来、この種の話は、党首討論の場がふさわしい。
首相の解散先送り方針で空気の緩んでいた国会は一転、対決色が再び強まる。首相が明確な方向を指し示さないと終盤国会は混乱する一方だろう。
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