産科補償制度、事務コストは年52.4億円
「余剰金が生じるのではないか」との指摘がある産科医療補償制度について厚生労働省は、年間100万人の妊産婦情報の管理や審査委員会の運営など「事務コスト」が年間52億4000万円掛かるとの試算を発表した。「剰余・欠損が出た場合の処理方法」については、「もし脳性まひの発生率が見込みより低ければ、剰余が生じることになり、損害保険会社の収益となります」としている。
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厚生労働省は11月17日、「第30回社会保障審議会医療保険部会において委員より寄せられた質問事項とその回答」を発表した。来年1月から開始する「産科医療補償制度」について、9月12日の同部会で委員から出された質問に対する厚労省の見解をQ&A形式で示したもの。
「産科医療補償制度」では、一分娩当たり3万円の掛け金が必要になることから、現在35万円の「出産育児一時金」を来年1月から38万円に引き上げることが同部会で了承されている。
しかし、掛け金収入が保険金の支払額を大きく上回るため、「余剰(金)が出るのではないか」「保険財政のお金をつぎ込むので、財務について透明性を要求すべきではないか」などの質問が委員から出されており、厚労省は「後日あらためて回答する」としていた。
回答によると、同制度の運営に掛かる「事務コスト」は年52億4000万円。「年間100万人規模の個人情報を管理し、20年にわたる補償を行うための分娩機関・妊産婦登録システムの開発および維持に要する費用、制度の運営や審査などに要する費用、補償金の支払い業務を行うための事務費・人件費などが必要となります」としている。
52億4000万円の内訳は、▽システム開発等経費(5年間限り)4.2億円▽妊産婦登録・審査等経費41.6億円(妊産婦情報管理経費27.5億円、審査、支払等経費14.1億円)▽長期分割金管理等経費6.6億円―で、1年間に掛かる費用と数年間にわたって掛かる費用が混在している。
財務の透明性については、「外部有識者によって組織され、公開により開催される『産科医療補償制度運営委員会』に(収支状況を)報告するとともに、公表する」と回答。その上で、「決算状況を踏まえ、遅くとも5年後をめどに制度の見直しを行うこととしており、仮に5年を待たずに剰余が大きく見込まれることになれば、医療部会および医療保険部会にも適宜報告し、早期に制度を見直すことも考えられます」としている。
「剰余・欠損が出た場合の処理方法」については、「もし脳性まひの発生率が見込みより低ければ、剰余が生じることになり、損害保険会社の収益となりますが、逆に発生率が高ければ、欠損が生じることになり、損害保険会社が経済的な負担を負うことになります」とした。
この回答の意味について、厚労省の担当者は「補償の対象となる脳性まひの件数は年800件と考えているが、もしこれを上回る900件に補償金3000万円を掛けると270億円。これに事務手数料の52億円を加えると、想定される収入の300億円を超えるため、欠損が生じる」と説明している。
【医療保険部会において委員より寄せられた質問事項とその回答のPDF】
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/dl/s1117-7a.pdf
更新:2008/11/18 12:55 キャリアブレイン
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