憲法
98条1項
条文修正
<明治憲法下の法令の効力>


条文正文
「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他
の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」


条文修正

@経過規定性否定説(少数説)
「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する」W現憲法下のW「法律、命令、詔勅及び
                           @

国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」


 @について
  ソース
   条解 日本国憲法 改訂版 有倉遼吉 時岡弘 編 三省堂 1989年
   「憲法98条1項は経過規定の性格をもつか」
   「否定説」
   「憲法98条は憲法交替の場合の経過措置を内包してはいない。この条文で憲法の条規に反し
    た場合無効とされる『法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部』
    (同条1項)というのは、いうまでもなく現憲法下のそれである。(長谷川正安・憲法判例
    の体系119頁)」
  
  私的コメント
   条文文言だけから考えますと、限定解釈と言えると思います。


A経過規定性肯定説(判例・通説)
「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する」W現憲法下の又は旧憲法下のW「法律、
                           A

命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」


 Aについて
  ソース
   最大判昭和25・2・1刑集4・2・73
   最高裁HP全文
   「憲法九八条は憲法の条規に反する法律等の効力を有しないことを規定しているが、同条は憲
    法施行の前後にかゝわらず制定せられた法律等の有効であるか否かを決定する基準を示す規
    定であると解すべきであるから、前記のような性格を有する食糧管理法は、特に経過規定を
    必要とせず新憲法の施行後においてもその効力を持続すること、同条の規定によつて明かで
    あると言わねばならない。」
 
  私的コメント
   条文文言だけから考えますと、文理解釈と言えると思います。

 
 AA経過規定性肯定説、かつ、旧憲法下の法令につき内容又は形式説
              (いわゆる形式説←コア抜けなので不正確表現。コア埋めが必要。)
 「この憲法は、国の最高法規であつて、」W現憲法下のものについて実質(内容)的に又は形式的
                    B

  に、旧憲法下のものについても実質(内容)的に又は形式的にW「その条規に反する」W現憲法


  下の又は旧憲法下のW「法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、そ


  の効力を有しない。」

 
   Bについて
    ソース
     別冊法学セミナー基本法コンメンタール[第四版]憲法 小林孝輔・芹沢斉 編 
     日本評論社 1997年 397頁 畑尻剛・城西大学教授ご執筆部分
     「本項」(98条1項)「が日本国憲法のもとで制定される法規範が憲法と手続・形式・
      内容において矛盾抵触してはならないことを定めているのは疑いない。」

     「形式説は、内容のほかに、法形式の差異によって明治憲法下の法の効力が否定される可
      能性を認め、日本国憲法における法律事項を定めた勅令は内容が合憲であっても、形式
      上違憲であり失効すべきであり、その存続には特別の立法措置が必要であるとする」。
  
    私的コメント
     文理解釈です。



 AB経過規定性肯定説、かつ、旧憲法下の法令につき内容説(判例)
              (いわゆる内容説)
 「この憲法は、国の最高法規であつて、」W現憲法下のものについて実質(内容)的に又は形式的
                    C

  に、旧憲法下のものについては実質(内容)的に______W「その条規に反する」W現憲法


  下の又は旧憲法下のW「法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、そ


  の効力を有しない。」


   Cについて
    ソース
     別冊法学セミナー基本法コンメンタール[第四版]憲法 小林孝輔・芹沢斉 編 
     日本評論社 1997年 397頁 畑尻剛・城西大学教授ご執筆部分
     「本項」(98条1項)「が日本国憲法のもとで制定される法規範が憲法と手続・形式・
      内容において矛盾抵触してはならないことを定めているのは疑いない。」

     (「明治憲法下で制定された法令」に話を絞った上で)
     「内容説によれば、憲法の条規に反するとは、法令の内容が憲法に違反することを意味
      し、形式・手続が異なるにすぎない場合には日本国憲法のもとでもそれに該当する法形
      式と同様の効力を持つ」。

    私的コメント
     限定解釈です。



私見
形式の意味 2つ
T形式面。法形式のみならず、手続をも含む。
 「形式説」というときの形式はこちらではないか。
 条文修正ではこちらの意味で使用。

U法形式のみ。手続を含まない。
 畑尻教授が「形式・手続」とおっしゃるときの形式はこちら。


私のてもとにある限りでの基本書では手続とは何かがいまいちはっきりしませんが・・・。
↓(参考資料)
辰巳法律研究所 04短演(1月期マスター)憲法3回bP0肢E解説
「明治憲法下の法律は帝国議会の協賛を経て天皇の裁可により制定されたものであり、いうまでもな
く、その制定機関及び手続は日本国憲法の条項に違反し、手続的には違憲である。」


■誤字、脱字、不適切な記述、より改良できる記述などありましたら、掲示板又はメールにてご教示
いただけると大変ありがたいです。よろしくお願いします。

 
トップページに戻る