世界的金融危機の克服を目指し、日米欧と新興国計二十カ国・地域の緊急首脳会合(金融サミット)がワシントンで開かれた。金融機関に対する監督強化などを盛り込んだ首脳宣言を採択し、閉幕した。
米サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融危機が実体経済に波及し、世界同時不況に陥ることが懸念されている。先進国だけでなく、中国やインド、ブラジルなどが一つのテーブルに着いたことは世界経済の現実を示したといえるだろう。
その意味では歴史的なサミットとなったが、いま足元に広がっている危機を乗り越えるための具体策には乏しく、市場にどれだけインパクトを与えられるかは不透明だ。
金融工学を駆使した証券化商品などで世界にリスクがまき散らされた反省に立ち、新しい国際金融秩序の構築を目指すことが大きなテーマだった。
サミットでは、金融機関について国際的な監視団を来年三月までに創設することで合意し、さらなる財政出動や金融緩和による成長回復などを明記した首脳宣言を採択した。
国際通貨基金(IMF)や世界銀行など国際金融機関は、新興国がより大きな発言権を持てるよう改革を推進するとした。日本は、IMFの基盤強化のために最大一千億ドルの拠出を表明した。
各国が実行する具体的な対策をスケジュールとともに盛り込んだ「行動計画」も公表し、進ちょく状況を点検するため次回会合を四月末までに開催することも決まった。
金融機関への監視団は、主要三十―四十社程度を対象に拠点がある関係国の当局者が年一回以上集まって意見交換、共同で監督する仕組みになるようだ。日本のメガバンクも含まれることになろう。欧州は規制や監督の強化に前向きだが、米国内には反対論が根強い。議長国としてブッシュ大統領は踏み出したものの、米欧の基本的な立場の違いを考えれば先行きは不透明といわざるを得ない。
IMF改革では発言力強化を求める新興国などの主張を認めたが、これまでこうした機関は全面的に米欧が主導してきた。本当に意見を取り入れていけるのか、疑わしい。もし実行できないようなら新興国などの不満が高まろう。
個々に見ていけば、サミットの合意事項の実行は簡単ではない。だが、各国が従来のやり方や思惑に引きずられて現状を変えられなければ、世界不況を招く。緊急的に開かれたサミットを機に言葉だけでない真の協調行動が早急に求められる。
激減する東部大西洋・地中海のクロマグロの漁獲規制を話し合う「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(ICCAT)の年次会合が、十七日からモロッコで開催される。日本は資源の枯渇を防ぐため総漁獲枠の半減を主張する方針だ。
この海域はクロマグロの最大漁場で、大半が日本へ輸出されている。しかし、世界的な需要増や乱獲で資源の危機的状況が高まり、対策が急務となっている。ICCATの科学委員会は十月、「資源回復へ一層の漁獲量削減が必要だ」として、二〇〇八年の同海域での総漁獲枠二万八千五百トンを〇九年以降は一万五千トン以下にするよう勧告した報告書をまとめた。
日本の方針は、この勧告に沿うものである。半減が実現すれば、日本の漁獲枠は約千三百トンに縮小される。だが、乱獲が続いて資源が枯渇し、ワシントン条約に基づく国際取引の全面禁止という事態にでもなれば、甚大な影響を受ける。大幅削減もやむを得ないとの判断に立ったのだろう。
今回の会合はICCATにとって大きな正念場である。これまで国別の漁獲枠や禁漁期などを設けて資源の存続を図ってきた。だが、現実は割り当てを大きく上回る漁獲や、航空機などで上空から群れの位置を漁船に知らせるといった違反が後を絶たない。ICCATの外部評価委員会は、対策の不十分さと加盟国のモラルの希薄さを厳しく指摘している。
会合では、総漁獲枠の半減に各国の理解が得られるかどうかが焦点となる。取り決めを厳正に履行する手だての検討も欠かせない。貴重な資源の持続的活用へ、加盟国は危機感を強めてICCATの機能を高めていかなければならない。日本の主導的な役割も問われる。
(2008年11月17日掲載)