2008年11月11日 21時52分
<裁判員制度>控訴審は1審尊重…最高裁司法研が研究報告
裁判員が加わって出した1審の結論を控訴審はどう評価すべきか――。最高裁司法研修所は11日、来年5月に始まる裁判員制度の下での控訴審の在り方について研究報告の骨子をまとめた。「国民の視点、感覚、経験が反映された結果をできる限り尊重する必要がある」と指摘し、1審の判断を重視すべきだと提言している。
裁判員の参加は1審だけで、控訴審は従来通りプロの裁判官だけで審理される。1審判決を破棄して差し戻せば再び裁判員を選び直すなど国民の負担も大きく、高裁の裁判官は頭を悩ませていた。司法研修所の研究報告は全国の裁判官が審理を進める参考にしており、日本の3審制の在り方にも大きな影響を与えそうだ。
報告書では、「1審判決の内容に誤りがないかどうかを記録に照らして事後的に審査する」という控訴審本来の位置付けを明確にし、この趣旨をより徹底すべきだとした。
その上で事実認定については「証人や被告の供述の信用性の判断が客観的な証拠と明らかに矛盾したり、事実を見落としている場合でない限り」、量刑も「よほど不合理でない限り」は、1審の判断を基本的に尊重すべきだと指摘。1審判決の破棄は、争点や証拠の整理が適切でないケースなど例外的なものに絞り込まれると思われると結論付けた。
量刑判断では「破棄をあまり広く認めると当事者が1審をないがしろにして、2審で判断を求めることになりかねない」と懸念。一方、死刑か無期懲役か判断が分かれるようなケースは、「控訴審がどのような考え方をとるか、なお慎重な検討を要する」と述べるにとどめた。【北村和巳】
◇解説…判決変更ハードル高く
司法研修所の研究報告は、裁判員制度が始まると控訴審で結論が見直されるケースは大きく減る可能性を示した。国民参加の実効性を確保し、制度定着を意識した指摘と言えるが、1審判決を不服とした控訴のハードルは高くなるだろう。
高裁は現状でも、1審の認定に誤りがないかを審査する場だ。ただ、「1審も控訴審もプロが詳細かつ大量の記録を読み込んで判断する。『自分だったら』と考え、一から同じ作業をしてしまいがち」(司法研修所教官)という。
裁判員制度が始まると、1審は書面審理はせずに法廷で述べられた発言や証拠に基づいて判断し、控訴審は記録の審査と様変わりする。高裁の裁判官にも「国民の感覚を反映した結論を、誤りとは言いにくい」との声も少なくない。
ただ、ある高裁裁判官は「量刑はともかく、事実認定については改めて厳格に判断した方がいい」と話す。裁判員裁判で予想される量刑のばらつきを、高裁段階で統一すべきだとの指摘もある。
研究報告は、その内容自体を「裁判員制度の国民の受け止めによって流動的な側面がある」と述べている。裁判員制度の運用状況によっては、控訴審の在り方が改めて議論となるだろう。【北村和巳】
裁判員の参加は1審だけで、控訴審は従来通りプロの裁判官だけで審理される。1審判決を破棄して差し戻せば再び裁判員を選び直すなど国民の負担も大きく、高裁の裁判官は頭を悩ませていた。司法研修所の研究報告は全国の裁判官が審理を進める参考にしており、日本の3審制の在り方にも大きな影響を与えそうだ。
報告書では、「1審判決の内容に誤りがないかどうかを記録に照らして事後的に審査する」という控訴審本来の位置付けを明確にし、この趣旨をより徹底すべきだとした。
その上で事実認定については「証人や被告の供述の信用性の判断が客観的な証拠と明らかに矛盾したり、事実を見落としている場合でない限り」、量刑も「よほど不合理でない限り」は、1審の判断を基本的に尊重すべきだと指摘。1審判決の破棄は、争点や証拠の整理が適切でないケースなど例外的なものに絞り込まれると思われると結論付けた。
量刑判断では「破棄をあまり広く認めると当事者が1審をないがしろにして、2審で判断を求めることになりかねない」と懸念。一方、死刑か無期懲役か判断が分かれるようなケースは、「控訴審がどのような考え方をとるか、なお慎重な検討を要する」と述べるにとどめた。【北村和巳】
◇解説…判決変更ハードル高く
司法研修所の研究報告は、裁判員制度が始まると控訴審で結論が見直されるケースは大きく減る可能性を示した。国民参加の実効性を確保し、制度定着を意識した指摘と言えるが、1審判決を不服とした控訴のハードルは高くなるだろう。
高裁は現状でも、1審の認定に誤りがないかを審査する場だ。ただ、「1審も控訴審もプロが詳細かつ大量の記録を読み込んで判断する。『自分だったら』と考え、一から同じ作業をしてしまいがち」(司法研修所教官)という。
裁判員制度が始まると、1審は書面審理はせずに法廷で述べられた発言や証拠に基づいて判断し、控訴審は記録の審査と様変わりする。高裁の裁判官にも「国民の感覚を反映した結論を、誤りとは言いにくい」との声も少なくない。
ただ、ある高裁裁判官は「量刑はともかく、事実認定については改めて厳格に判断した方がいい」と話す。裁判員裁判で予想される量刑のばらつきを、高裁段階で統一すべきだとの指摘もある。
研究報告は、その内容自体を「裁判員制度の国民の受け止めによって流動的な側面がある」と述べている。裁判員制度の運用状況によっては、控訴審の在り方が改めて議論となるだろう。【北村和巳】
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