昨日、通りすがり♀さんから「どういった教員なのか」という興味深い質問をして頂きました。
興味深いというのは、僕自身、今までそんな事を思ったことがなかったからです。自分の事を書くのは非常に恐れ多い。しかしせっかくの機会ですから、「どのような環境で教員をしているか」という事を、追々紹介させて頂いてその中で「どういった教員」なのか、想像して頂ければ幸いです。
今回は全体像として、大まかな仕組み紹介してみようと思います。
まず、アメリカの社会福祉政策史を紐解くのは退屈ですが、10秒で説明しますのでお付き合いを御願いします。
1930年代にアメリカ合衆国を経済的に破綻させた「大恐慌」の結果、町に溢れかえった「失業者とその家族」を救済するため、当時の大統領、Fルーズベルトが施行した様々な救済プログラムをもって、アメリカ福祉政策はその幕を開けJFケネディ大統領、Lジョンソン大統領の下、拡大・充実が図られた。そして、1996年クリントン大統領によって60年間続いた福祉政策は「税金の無駄遣い政策」の汚名を晴らすためTurning Pointを向かえ、現在の福祉政策に改革された。
クリントン大統領時代に、改革された福祉政策の注目の点は
1) 生活保護(現金支給、各種サービスの提供)の受給期間の上限設定
2) 福祉政策の監督・責任等の行政権が連邦政府から州政府に委譲
それぞれの詳細は、以後の流れの中で取り上げます。
さて、
僕は、LA地区教育委員会管轄の9つあるカレッジの一つにある「WorkForce Education Department」に所属しています。このデパートメント(部署)は、(連邦政府より福祉政策行政権を委譲された)州政府とコラボで「社会福祉プログラム」の運営を担当しており、かっこよく言えば、社会福祉政策のフロントライン、「第一線」です。個人的には、「戦場」だと日々感じています。
ところで、よく質問されるのが
「どうして、全く共通点のない教科を受け持つことができるのか」
と、なるほど。
この部署のスタッフの給与は大学の予算ではなく、州の予算で払われます。よって、一応は大学の職員ですが、独立した部門としてあります。例えば僕の場合、こういう部署にいるために、教員であっても、特定の学部に所属することは出来ません。しかし、逆にこの理由のために、かなり自由ですから、僕の場合、数学と政治・歴史という普通ではあまり見聞きしない組み合わせの授業をすることも可能です。
プログラム名
「LACC WorkForce Education Department TANT/CalWORKs Program」
通称「CalWORKs」<
クライアント(生徒)
「生活保護を必要とするシングルマザー(ファーザー)とその家族」
提供サービス
1) 教育・職業訓練サービス
2) 就職斡旋サービス
3) 住居・保育・食生活費の手続き代行サービス
4) LDS(Learning Disabled Student)学習障害者サービス
5) DV(Domestic Violence)家庭内暴力相談サービス
6) Social Worker代行サービス
7) 各種法律無料相談
8) 保育園
と、非常に多岐にわたります。
現代版「駆け込み寺」と言えば、実際のプログラム内の雰囲気とクライアントの実情を一番良く表していると思います。
僕が直接関係しているのは「教育・職業訓練サービス」と「LDS(学習障害者)サービスの教育部門で、州政府指定、大学指定、あるいはデパートメント自作のカリキュラムに沿って、クライアント(生徒)に講義を提供します。これらの講義は基本的に、シングルマザー(ファーザー)で、生活保護を受けているクライアントのみ履修可能です。
現在、予算カットのあおりを受けつつも履修可能なものは、GEDコース、大学学位課程コース、LEPコース、学習障害者コース、ESLコースの5つ。この教育部門で、僕は数学と政治・歴史の授業を担当していますが、特に、GEDコース、学位課程コース、そして学習障害者コースを受け持っています。
GEDとは、General Education Developmentと言い、日本では「大検準備コース」と言われています。LA地区の高校中退、退学率は最近4割に達しているので、非常に「人気」あるコースです。中には10歳の時に妊娠して、シングルマザーとなり、僕たちのプログラムに送られていきます。ちなみに、このGEDコースに来る生徒は、高校中退者であろうがなんであろうが、すべてシングルマザーで、一人当たり2−6人の子供がいます。
学位課程コースは、普通の大学レベルのクラスですが、最近は予算カットのため僕のプログラムでは学習障害者コースと併用して設置しています。LDは盲目の生徒からADHDの生徒、また、軽度の知能障害を持つ生徒まで含まれています。
今日はここまでにしておきます。
次回はGEDクラスと生徒についてご紹介します。