がんばらない介護生活を考える会は11月11日、介護の日セミナーを開催した。同会委員代表の鎌田實氏(諏訪中央病院名誉院長)が「いい日、いい日、毎日、あったか介護・がんばらない介護ありがとう」をテーマに記念講演を行った。

鎌田氏は講演で、35年前に内科医だった頃、担当した男性高齢者について話し始めた。「村のおじいちゃんが脳卒中で2カ月半入院した。私は治療やリハビリテーションに全力を尽くし、右片マヒが残ったものの歩いて退院する姿に“俺が助けた”と満足感、充実感があった。本人も、にこにこ笑って退院していった。1週間後に町でおじいちゃんに会ったら、にらまれて笑顔はなかった。話してみると「マヒが残って体がかがめない。野良仕事ができない」と言う。その時に初めて私は、退院したら何がしたいか、おじいちゃんの夢は何か、入院中に1度も本人に聞かなかったことに気づいた」
鎌田氏は、このエピソードから「身体状況がどう回復したのかではなく、医療でも介護でも、本人がその後の生活をどう送りたいのか、何を望んでいるのか理解しなくてはダメ。私は35年前、本当に大事なことは何かを、おじいちゃんから教えてもらった」と語った。
続いて、93歳女性を看取った体験談で「明るくて面倒見がよいおばあちゃんは、村でも人気者で危篤の知らせに村中の人が集まった。私も駆けつけると、おばあちゃんは娘に「鎌田先生にビールを出してやっておくれ」とジョークを飛ばし、村人たちも「さすがバアちゃんだ」と笑った。その後、おばあちゃんが息を引き取ると村人たちは号泣した」と鎌田氏が話すと、会場では参加者が涙ぐむ姿も見られた。
鎌田氏は「ユーモアや笑いは周りの人を明るくし、支えよう、大切にしようという輪が広がっていく。疲れている介護者に良い介護ができるわけはない。社会的なサービスを使って家族をつぶさないこと。そして、その家族を守る介護職を社会が大事にすること」と介護の日の意義を訴えた。
◎介護の日セミナー2へ続く
■取材協力
がんばらない介護生活を考える会
http://www.gambaranaikaigo.com/index.htm■関連記事
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