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消火用品は「適材適所」、エアゾール式?消火器? |
2003/11/27 |
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かつて一般家庭で「火災を消す器具」といえば、消火器と相場が決まっていた。
だが、ここ数年、デパートや百貨店の防災関連売場の消火用品の中に、従来から見かける消火器に加え、エアゾール式の簡易消火具が並んでいるのをご存知だろうか。どの製品も本体の缶は殺虫剤のスプレー式容器と同じ位の大きさで、軽いのが特徴だ。
その操作方法も簡単。消火器は「安全栓を抜き、ホースを外し、レバーを握る」という3つの動作が必要だが、エアゾール式簡易消火具は、キャップをはずし上部ボタンを押すだけの製品が多い。価格も一般家庭向けの消火器の売れ筋が1万円前後であるのに対し、数千円から売られている。
販売の現場でも、消火器とエアゾール式が一緒に陳列されていると、エアゾール式について質問してくる客が多いという。この傾向を裏付けるように、エアゾール式簡易消火具の国内生産量は増加傾向にある。
社団法人日本エアゾール協会による国内統計・エアゾール製品生産数量調査表の「簡易消火具」の項目を見ると、2000年43万6000本、2001年50万7000本と伸び、2002年には前年比30%増の65万9000本と増加が目立った。
いっぽう消火器は、メンテナンス・フリーとして内圧ゲージを備えた住宅用消火器が2000年度30万2000本、2001年度35万7000本、2002年度17万2000本(社団法人日本消火器工業会への検定申請数)と、2002年度は前年度比52%と大幅に減少した。
2002年(年度)を境にエアゾール式簡易消火具が大きく伸び、住宅用消火器が減少した背景について、それぞれの業界関係者は「テレビ・ショッピングやインターネット販売を通じ、『安く、操作が簡単なエアゾール式』というイメージが消費者に浸透したためでは」と推測する。
小さく、軽く、値段も安く、操作も簡単といい事尽くめに思えるエアゾール式簡易消火具。だが使用の際は、その製品特性を考慮しないと、効果が有効でない場合がある。
例えば、家庭の出火原因として代表的な天ぷら火災を消火しようとする場合、ハロン系薬剤を使ったエアゾール式消火具では、消火できない可能性があるという。
一般にハロン系消化剤は、燃焼物と酸素を遮断する「窒息効果」で消火に効力を発揮する。しかし、強化液型の消火剤とは異なり、燃焼物への冷却効果はない。天ぷら油は約380度で自然発火するため、仮にハロンを放射している間に油温が発火点以下に下がらなければ、いったん火が消えても再発火するためだ。
日本におけるハロン製品の製造はモントリオール議定書で既に規制されているが、製造された製品の販売は規制されておらず、また、韓国など海外の一部では未だに生産が行われているため、国内にはハロンを使ったエアゾール式簡易消火具が多数流通している。
また、使用する消化剤の容量の問題もある。
総務省の消防白書14年版によると、初期消火で消火器を使用し効果があった際に使用された消火器の本数は、火災1件あたり2.3本。消火器の場合、薬剤量1キログラム以上の製品(粉末消火器の場合)が一般的だが、エアゾール式簡易消火具の容量はだいたい300〜600グラムだ。
こうした点について、先ほど都内の消防防災展に出展した消火器メーカー、マルヤマエクセル(本社=東京都墨田区)の飯高政浩・防災営業部千葉営業所長は「ビル火災でも一般住宅火災でも、その火元は同じ。(消火用品を)購入の際は価格なども大事でしょうが、まず『火を消すにはどれぐらいの消火能力が必要なのか』を基準となさるべきではないでしょうか」と話す。
アウトドアに大型の消火器を持っていくことは現実的でないし、頻繁に天ぷら料理を行う家庭の消火用品が、ハロン系のエアゾール式簡易消火具だけでは心もとない。自分や家族の「火の使用状況」に合わせた消火用品を選ぶことが大切といえる。
こう書く筆者、昨年購入し備え付けていたエアゾール式簡易消火具を改めて調べてみると、「薬剤主成分:ハロン1211」と表記された輸入品だった。
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(遠藤博丈)
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