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【長野】

黒竜江省出身伊東さん、北京大学に合格 「日中友好にかかわりたい」

2008年11月9日

 中国・黒竜江省出身で、小学校から高校まで長野市で過ごした伊東紀子さん(20)が9月に北京大に入学した。国籍に悩んだ時期もあったが、「日中友好にかかわりたい」と夢を抱いて乗り越えた。小学校時代に日本語を教えた窪田かづよさん(54)は「頑張れば夢がかなうということを見せてくれた」と温かく見守る。

 伊東さんは1994年、中国残留孤児の祖母(67)を追って来日した。篠ノ井西小に入学し、気付けば日常会話は身に着き、たくさんの友達ができ、当たり前のように楽しく遊んだ。3年生の時に日本国籍を取得したが、意識したことはなかった。

 ところが中学に入って状況が変わった。日本人と中国人のグループに分かれ、いがみ合っていた。自分も周りから中国人と決めつけられた。「中国へ帰れ」と、何度も罵声(ばせい)を浴びせられたという。

 「私は私。何で中国の悪口を私に言うの」。悩んだが、結局、中国出身の友達とかたまって授業をサボり、先生へ反抗した。好きだった英語で日記を書いて担任に読んでもらおうとした時も、冷たくあしらわれたように思った。「私が中国人だから?」。見えない差別のようなものを感じた。

 高校2年の春に受験した中国語検定で成績が良く、1カ月間、中国に留学できることになった。滞在した四川省は5つ星ホテルや立派な遺跡が残る一方、路上で物を売る子どもを目にし「あのとき初めて中国を知った」と振り返る。帰国後は中国への思いが日増しに強くなり、北京大への入学を選んだ。

 昨年9月に同大の予科へ入学。他国の学生と接する中で、14年間生活した日本のものの考え方、生活習慣が染み込んでいることに気付いた。「日本人でいいんじゃないか」。ようやく「自分」が確立し、勉強に打ち込めた。

 入学から2カ月。伊東さんは「外務省か国連に入って、日中間の懸け橋になる」という夢に一歩ずつ近づいている。

 (戸川祐馬)

 

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