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2008年11月17日

◎日本語講師養成 在住外国人に優しい土地へ

 石川県国際交流協会は現在、金沢市にしかない日本語講師養成講座を新たに小松、七尾 両市でも展開することにした。

 小松はこの十九日から、七尾は来年二月からの開講である。県内で生活する外国人は増 加をたどっており、その人たちの要望にこたえ、在住外国人に優しい土地を目指すものであり、皆で支えていきたい。

 金沢をはじめとして加賀、能登両地区でも在住外国人が増え、昨年末で登録者数が一万 千二百二十人になった。実態の把握が遅れているが、これらの人たちに対して企業や、海外で生活した経験を持つ地域の有志がボランティアで日本語を教えている。が、教える人の絶対数が不足しているため在住外国人から日本語の講師や教室を増やしてほしいとの要望が前々から出ていた。

 交流協会としては、とりあえず二―三カ月間に十回開講し、小松、七尾両市に各二十人 、合わせて四十人の日本語講師を育てる。身近な外国人に日本語を教えることには資格も要らず、自由にできるのだが、「我流」でやるよりも、効果が検証されている方法でやるのが望ましい。

 だいぶ前に、太平洋戦争後、米軍が日本に駐留する兵士用につくったという日本語ハン ドブックを見たことがある。「助けてぇー!」から始まるのにびっくりしながらも、なるほどと思ったものだ。考えるまでもなく、その国の言葉を覚えることは安全に生きていくために必要不可欠ともいえる。

 もちろん、言葉というのはそうしたことのためだけにあるわけではないのだが、その国 に溶け込む上でも大事な「道具」であることを、ハンドブックが端的に教えてくれたのである。

 生活する上で必要な日本語ができるようになると、職場の人間関係が深まるのは言うま でもないことだし、地域の人々との交流も広がり、見聞も豊かになる。人間の基本的な欲求が満たされるため、「石川県に来てよかった」ということになる。在住外国人に日本語を教えるのは彼らに対して優しい土地であるための第一要件とも言える。

◎技術の流出防止 安全という国益も考えて

 経済産業省は、大量破壊兵器に利用される危険性など安全保障上問題がある重要技術の 国外流出を防ぐため、外為法による規制を強化する考えという。経済のグローバル化やIT化の進展、頻繁な離転職などを背景に重要情報の流出事件が多発しているが、軍事転用可能な技術の国外流出は、国内産業の競争力の低下に加えて、安全保障上の脅威にもなりかねない。国内外の投資の促進という経済の流れを阻害しないよう配慮しながら、重要技術の管理を厳正に行う必要がある。

 安全保障に関する日本の情報管理の甘さはかねて指摘されるが、技術の国外流出が絶え ない要因として、自国の経済社会の安全確保という国益意識の希薄化も挙げられる。技術の国外流出防止には法律の見直しだけでなく、企業や学界、政府関係者らの意識を高めることも大事である。

 技術の不正な移転、流出を防ぐ法律として現在、不正競争防止法や外為法などがある。 知的財産保護の観点から「営業秘密」を保護する不正競争防止法に対し、外為法は安全保障の観点から規制するもので、航空機や原子力、武器など特定の業種・品目の技術を外国企業などに提供する場合、経産相の許可を必要としている。

 しかし、法規制にかかわらず技術の流出は続いており、経産省が二〇〇六年に行った製 造業関係の企業アンケートによると、約35%の企業が「過去に技術流出があった」と答えている。

 最近の目立った流出事件では、元在日ロシア通商代表部員が日本の光学系機器メーカー 従業員から光通信の機密部品を不正に入手する事件が〇六年にあり、昨年は自動車部品メーカーに勤務する中国人従業員が図面データを大量に持ち出し、問題になった。技術の流出先は六割以上が中国、次いで韓国が三割といわれる。

 経産省は昨年、外資の企業買収による技術流出に歯止めをかけるため、事前の届け出規 制を強化したばかりだが、経済スパイ法を持つ米国などに比べると、日本の技術情報などの保護法制はさらに見直す余地がある。


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