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「面白かった」を実行につなげられるか

 現場の医師やコメディカル、国会議員に官僚、企業のトップやジャーナリストなど、個性的なメンバーによる破天荒な報告が続いた「現場からの医療改革推進協議会」の第3回シンポジウム。薬事改革から患者と医療者の協同、医師の自律まで幅広いテーマで議論されたものの、会場からの質問は「勝手知ったる」面々からで、違う立場の来場者からの発言はほとんどなかった。シンポジウム終了後は「面白かった」の感想が飛び交ったが、果たして実行につなげられるか。自民党の橋本岳衆院議員らが述べた「無関心の層」に呼び掛けて合意を得ていくためにも、「言いたいことを言って終わり」にしない今後の活動に期待したい。ここでは、議論の最終テーマだった「医師自律」での発言内容と、橋本議員らの問い掛けをお届けする。(熊田梨恵)

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 医療者や弁護士、国会議員や企業の役員など個性豊かなメンバーで構成される「現場からの医療改革推進協議会」は年に一度、シンポジウムを開催しており、今年で3回目を迎えた。今回も「医師自律」をはじめ、「医療改革」「薬事改革」「臨床研究」「患者と医療者の協同医療」など幅広いテーマで議論が行われた。

 「医療改革」では、厚生労働省改革推進室の村重直子氏が、同省が検討中の死因究明制度について、「自分が医療事故に遭い、警察に通報される確率もゼロと言える人たちが、医療事故調の法案作成を裏で支えている」と発言。「薬事改革」では、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の委員を務める小野俊介氏(東大大学院薬学系研究科医薬品評価科学講座准教授)が、同検討委が議論している医薬品行政を担う新しい組織について、「新組織への移行・制度変更に伴うコストの論点が隠されている」と述べ、厚労省が重要な問題を置き去りにしていると指摘した。このほか、東京都立墨東病院内科医長の濱木珠恵氏が同院の過酷な労働環境について、丹波新聞記者の足立智和氏が兵庫県丹波の地域医療の現状について報告した。

 さまざまな報告があり、会場からも積極的に発言が出されたものの、発言者はほとんどが登壇者や協議会発起人の関係者。事務局によると、今回は患者側弁護士など、登壇者とは違う立場の参加者も多かったというが、こうした人たちからの発言はほとんどなかった。シンポジウム終了後に参加者に聞いてみると、「ほかでは聞けない面白い内容で、エキサイティングだった」との感想があった一方で、「消化不良を起こした。結局のところ、何が言いたかったのか分からない」とは、インターネットを見て参加したという埼玉県の40歳代の女性。

 ただ、医療界でこれだけ多様な人脈や行動力を内包しているネットワークも珍しい。後半に議論された「医師自律」のテーマでは、臨床医の立場から積極的に医師の自律や、日本医師会の“3分割”を主張している小松秀樹氏(虎の門病院泌尿器科部長)と、日医の常任理事も務める内田健夫氏(内田医院院長)が並んで登壇した。国立がんセンター中央病院長の土屋了介氏や、東京都世田谷区で「若手医師の会」をつくった神津仁氏(神津内科クリニック院長)らも登壇。医療界のトップが医師の自律についてきちんとした場を設けて具体性のある議論をすることは画期的とも言える。
 小松氏が主張するように「ほかの医師にも議論に参加してもらい、あと2、3年のうちに、できるところから少しずつやっていく」ため、この議論は今後の土台になると思われる。

 ただ、こうした議論が「言って終わり」になる恐れもある。「患者と医療者の協働関係」をテーマにした議論で、民主党の梅村さとし参院議員と橋本議員が、こうした議論を国民の合意へと近づけていくために、「医療に無関心な層に興味を持ってもらわなければいけない」と投げ掛けた。

 ここでは、「医師自律」の議論の内容と、梅村、橋本両議員の発言を紹介する。

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【医師自律】
土屋氏 自律は自分で自分の行為を規制することで、外部からの制限に対して、自身の立った規範に従って行動すること。個々の医師は頑張っているが、医師全体として本当に役割を果たしてきたかというと、今までも議論があるところだ。治験や医療事故調、専門医、救急の問題について、「厚労省が悪い」とよくいわれるが、自律の観点から言うと、厚労省ではなく医師が総体として自立していないのが根本的に悪い。医師が自律して、政策立案を含めて医師全体として統一した建設的な意見をつくることが必要だが、それがないのでやむを得ず厚労省の医系技官がつくっているという解釈ができる。一番の典型が医療事故調。19学会が第三者機関をつくるべきと要望した。しかし、「自分たちでつくりたいから厚労省に応援してほしい」という要求ではなかった。厚労省からしたら、「つくってくれと言ったからつくった。それで問題とは何事だ」ということで、同情すら覚える。「われわれ医師自体が自律し、規範を持って行動することで患者を守っていこうという観点で、この事故調をつくりたい」と言っていくことが自律。さまざまな(臨床研究に関する内容が悪い)ガイドラインを厚労省が作ったと責める前に、われわれが作らねばならない。専門医制度もそうで、各学会がちゃんとやっていない。医師がまとまるよう社会から突き上げてもらいたいと思うくらいだ。今回の産科や救急の問題などについても、医師の自律というテーマはさまざまな問題の根源にあるものだと思う

鈴木寛民主党参院議員(司会) 医師の自律、自主的懲戒という話をしたが、それができるのかどうなのか。その判断について大きく分かれている。医療界がそうした自律をどれぐらいのテンポで、どの程度つくり出せるのか。その可能性をきちっと詰めていきたい。

小松氏 自律は土屋先生の言った通りで、医者の方がだらしない。それは痛感していて、何とかならないかということだが、あまり人に頼ってはいけない。県の医師会のある方が、公益法人制度改革のことを気にしていたので勉強した。すると、これは日本の公益法人の考え方を変えようという百数十年ぶりの大改革で、あるべき論から出ている素晴らしいものだった。今あるもので“変なもの”には差をつけましょう、利益増進に寄与するものは公益法人にしましょうというもの。今年12月1日に施行されて、5年の間に(公益社団法人か一般社団法人に)移行する。これはチャンス。公益のための民の活動、それを団体としてできて初めて、自律も医者のコントロールもできる。学会が自立しているかというと、多くは学会員の自律というよりは、大学の教室の自律だった。学会、日医、病院団体などそれぞれでなく、一緒にやらないと駄目。世の中変わってきているのだから、考え方をがらっと変え、それにのっとったものをつくる。日本の社会の次の時代へのステップになる。それを医療界がやるからいい。

(続きはこちら)


更新:2008/11/16 22:50   キャリアブレイン

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