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【暮らし】

広がるメール悩み相談 言葉交わさぬ気軽さ 匿名の安心感 

2008年11月16日

 仕事や家庭の悩みを打ち明け、アドバイスしてもらえるメール相談が広がっている。従来の面接相談、電話相談に抵抗がある人にも、言葉を交わさなくてもいい気軽さ、匿名の安心感が受けているようだ。 (砂上麻子)

 「自分が何をしたらいいのか分かりません。友だちもいません。孤独です」。一年前から引きこもっている三十五歳の男性は「東京都ひきこもりサポートネット」のパソコンメール相談に悩みを送信した。相談員は「これからのことを一緒に考えていきましょう」と返信。やりとりを繰り返した半年後、男性からの最後のメールには「出掛けるのも以前より苦痛でなくなりました。精神的につらい時支えになっていただきありがとうございます」と記してあった。

 同ネットは四年前、東京都に委託された東京学芸大で始められ、毎月百件を超える相談が寄せられる。返信するのは、NPOなどで引きこもり問題に携わった相談員で、一週間以内に返信している。相談の約六割は本人からだ。

 同ネット統括責任者の田村毅同大教授(思春期精神医学)は「面接相談には引きこもっている本人は行かない。電話相談もしゃべることが大きな精神的負担になる。ネットなら匿名で気軽に相談しやすい」と指摘する。

 静岡県警鉄道警察隊も、電車内の痴漢や盗撮被害でメール相談を受け付けている。同隊は「深刻な問題で、電話よりメールの方が相談しやすい」と設置理由を話す。

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 「職場も忙しすぎて、社員同士で相談できる雰囲気にないから、メール相談に頼る人が多い」と指摘するのは、無料でキャリア相談を受ける「キャリメール」のスーパーバイザー水野みちさん。

 今年四月から二十−三十代を対象にキャリメールを始めた日本キャリア開発協会(東京都台東区)には一日約五十件のメールが届く。転職や職場の人間関係に関するものが多い。水野さんは「若い世代は成功体験が少なく、自分に自信を持てない人が多い。メール相談に、気持ちを支えてもらえる安心感を求めているのでは」と推察する。

 疑問や悩みを不特定多数に投げかけて解決の糸口を見つける相談サイトも人気だ。サイバーエージェント(東京都渋谷区)が今年九月から運用を開始したサイト「Sooda!」ではメールでの相談に対して、興味を持った一般の閲覧者が回答してくれる。質問内容は、料理や家事の疑問から子育て、家族関係の悩みなど幅広い。ほとんどの質問に三十分以内で回答が届くという。Sooda!事業部の落合雅也さんは「多くの人の意見を聞くことで『自分と同じ人がいるんだ』と安心できる」とアピールする。

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 メールカウンセリングを行うNPO法人「日本オンラインカウンセリング協会」(東京都中央区)は七年前から、メールカウンセラーを育成している。養成講座では、具体的な事例に沿った回答の作成のほか、カウンセリングの方針の立て方や精神疾患の基礎知識などを学ぶ。渋谷英雄理事長は「文章だけに頼るので、面接より難しい面がある。力量のあるカウンセラーを育成してメール相談の体制を整えたい」と話している。

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 一方で、「メール相談」を装った悪質業者に個人情報をつかまれ、被害に遭う例もある。メールを送る前に、受付団体の情報を集めるなどのチェックが必要だ。

 

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