西日本新聞

児童虐待 大人のサインも見逃すな

2008年11月16日 10:26 カテゴリー:コラム > 社説

 それはむごい事件だった。栃木県小山市で、4つと3つの幼い兄弟が、虐待の末に同居していた男に橋から川に投げ込まれ、死亡したのである。

 この2004年9月の出来事をきっかけにして、小山市の市民グループが翌年、オレンジリボン運動を始めた。

 虐待を受けている子どもを救うとともに、育児に悩む親を支援して家族のきずなを回復しなくては-との願いから、暖色系のオレンジリボンを運動のシンボルにしたという。

 11月は児童虐待防止推進月間だ。

 小山市の運動を全国に広げるかたちで厚生労働省なども加わり、06年から各地で啓発行事が実施されている。今年の標語は「助けての 小さなサイン 受け止めて」。

 いたいけな子どもが親をはじめとする周囲の大人から肉体的、精神的虐待を受けて心身に深い傷を負い、最悪の場合、短い生を閉じてしまう。

 こうした悲劇をなくすには何よりもまず、被虐待児童を早く見つけて保護しなくてはならない。

 厚労省によると、2007年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待は過去最多で4万件を超え、1万件を突破した99年から8年間で4倍になった。

 虐待を受けて亡くなった子どもは、ここ数年、毎年50人前後に上っている。毎週1人の幼い命が虐待によって消えていることになる。

 核家族化で親類付き合いや近隣関係が希薄になり、育児上の悩みによるストレスが募りがちなことなどから、児童虐待の実数も増えてはいるだろう。

 しかし、児童虐待は昔から存在していながら、家庭という「密室」に閉じ込められているために、虐待の事実が見えにくかった。

 統計に見る急増傾向は、周囲の人が「助けて」のサインに以前よりも多く気付くようになったことを物語っている。

 1962年、米国の小児科医ケンプが報告した「バタード・チャイルド・シンドローム」(殴打された子どもに見られる症候群)を契機に、米国の各州で子どもを虐待から守る法律ができた。

 日本で重大な社会問題として認識されだしたのは90年代に入ってからだ。2000年4月に施行された児童虐待防止法はこれまでに二度改正され、虐待者に対する児童相談所の介入権限を強めた再改正法が今年4月に施行されている。

 しかし、虐待する大人と虐待される児童を強制的に引き離して保護するだけでは、児童虐待はなくならない。

 幼いころ虐待を受けた人が、親になって自分の子を虐待するケースも少なくない。なぜそうするのか分からないまま虐待に走り、自責に駆られて苦しむ大人がいる。彼らも何らかのサインを出しているはずだ。それを見逃さずに救い出す社会的な仕組みを、より強めていきたい。


=2008/11/16付 西日本新聞朝刊=

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