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世界人口白書 女性の人権高めるには

11月16日(日)

 世界の人口は増え続けて、67億4900万人を数えた。国連人口基金が公表した2008年版の「世界人口白書」で明らかになっている。

 50年には、91億9000万人を突破すると予測される。途上国の人口増加が大きな要因だ。逆に日本は、現在の1億2790万人から、50年には1億250万人に減ると推計される。

 世界、とりわけ途上国の人たちが安心して暮らせるにはどうするべきか−。白書は毎年、さまざまな方策を示してきた。今年は人権、特に女性の人権を高めるために、文化に配慮した取り組みの重要さを強調している。

 女性の置かれた状況は厳しい。読み書きのできない世界の成人9億6000万人のうち3分の2が女性、就学していない子ども1億3000万人のうち7割が女子だ。

 国連のミレニアム開発目標では、2015年までに妊産婦死亡を1990年水準の4分の1に減らすと決めた。実際には大きな前進はみられない。

 白書が問題の解決のために、文化に配慮した取り組みを呼び掛けた意味は大きい。生活は政治や経済だけでなく、文化的慣習にも大きく影響されるからだ。

 女性が健康な暮らしを営むには、出産など生殖と性について自分の意思で選択、決定することが大切だ。途上国では家族計画が普及せず、出産を自己決定できないでいる女性も多い。

 こんな地域では、文化的な背景を見つめ、住民の意見をよく聞き、地元協力者を通じて活動するなど工夫を凝らしたい。

 若すぎる結婚や女性性器切除も有害な文化慣習だ。切除は成人への通過儀礼という意味を持つ。通過儀礼には理解を示した上で別の儀式を代替案として示せば、受け入れられやすい。

 女性の能力強化と、男女の不平等を解消することも、引き続き大きな課題である。男性からの暴力をなくしたり、女性の社会進出を促したりする取り組みを強めたい。教育が欠かせない。

 白書は、紛争が女性の出産をめぐる権利や健康などを脅かすことにも注意を喚起している。暴力を容認する傾向が強まり、女性に犠牲が押しつけられる。日本をはじめ先進国は、途上国の紛争防止へ、支援を強めたい。

 今年は、世界人権宣言の60周年にあたる。世界の人権状況がどうなっているか、広く見つめ直したい。日本国内の人権問題も問い直すときである。

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