(cache) 金 靖浩「およそ”今の”自分」武蔵野美術大学芸術文化学科

武蔵野美術大学 芸術文化学科 情報処理I resonance

金 靖浩「およそ”今の”自分」

text:吉田 雅崇

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photo by Mariko Kuwata


 金 靖浩は紛れもないクリエイターだと声を大にしてチョコレート展あたりで叫べばよかった。そう思わせてくれる金氏は発熱によりふらふらになりながらも自宅に招き快く質問に応じてくれた。
彼の映像作品には彼の情熱のようなエネルギーを感じる。まぁそれは実際に作品に触れなくてはいけないのだが。というわけで金 靖浩の名刺代わりに「およそ自分」をみてほしい。

およそ自分


 

project by Yasuhiro Kim

金氏が考える「映像」というメディア

まぁ、映像というメディアは…んー、わからない。ラッピングするものというか。さんざん考えたけど、映像だけじゃだめ。音、立体、絵画的要素をまとめるものだと思う。コラボレーションの包装のためのメディアですかね。そして辻斬り。

-金氏の映像をみてて感じる金 靖浩らしさは意識してます?

 してないですね。作品としてのアウトプットの他に遊びで映像も撮っているんですが、作品としてのアウトプットにはシンメトリー、空気感の統一が行われてますね。それが作品を考えるきっかけにはなります。まぁ昔から映像を一緒に作っていくメンバーが変わってないのもあるからかもしれませんが。

新作「BGM」を作った意図

意図から少し話はずれますが、どんな映像でもコンセプトは後から付いてくるものなんですよ。そんで、まぁやりたいなぁって頭の中にあることは完全に自己満足で完結しないように。そうですね、相手と何かしらのアクションがあれば何をやってもいいぞと、そんなルールは設けてますね。みたあとに「あ、わかっちゃたよ」って相手が思うようなのを今回は作りたかったというか。その感覚の答えは決して一つじゃなくて、百人百様であってほしい。あとは場所という感覚。その場所がどんな意味を持つのかとわかってくれたら。んーまぁみてください(笑)

―というわけで新作「BGM」をみていただきたい。

BGM

project by Yasuhiro Kim

将来のビジョン

 近い将来の話をするなら、卒業後もう一度大学生かなぁとか。んー就職はしないですよ。やりたい仕事はないしやれるものもない。外国になにかを得に行こうかななんても思ってますね。まとめるなら、作家希望です。

―もっと先の未来は?

 映像をやってるかはわかりません。ただ、やりたいことをやってられたらいいですね。

金 靖浩にとっての映像とは何か

 自分の頭の中のイメージが映像になるというのは、作品にしてみせることができるというのは楽しい。それは単純に。でも作ってるときは楽しくないですよ。辛さを楽しんでるとは思わないですしね。作る前の仲間とのコミュニケーションと、みせたあとのリアクションから生まれるコミュニケーションは楽しい。つまり僕にとっての映像とは一言で言うなら、野球選手が野球をやる感覚とは違うってことです。そして日本刀、刺されんな、痛いよ。つまりそういうことです。


photo by Mariko Kuwata

―およそ自分、BGMを最初にみた時、自分の在り方について考えさせられ自問自答した。金氏の映像作品にはそのような、こちら側にキャッチボールを求めてくるような何かがある。それは日頃、彼が持っている情熱のようなものによるのだと考えているが、彼という人間を知れば知るほど作品に触れたくなり次の作品を期待してしまう。今回、発熱で何も食べてないという金氏にお粥を作ってあげた。それを頬張りながら語る彼の表情は輝いていた。発熱などいつの間にか関係なくなっていたかのように、ただ純粋にひたむきに自分の考えを語ってくれた。その純粋さが失われない限り彼は彼で在り続け、自分がやりたいことを精一杯やっていくのだろう。ただ単純にみるだけでもいい。何も考えずに。それでいい。だけど見終わったあと何かを考えてしまう。その時に金 靖浩とのコミュニケーションが生まれる。直接会話せずとも。その瞬間を大事にしようと思う。それは何かしらの糧になるはずなのだから。

取材・場所/2007年11月12日 金靖浩自宅にて

about


●金 靖浩(きむ やすひろ)
1988年/東京都出身
暁星高等学校(東京都)卒
武蔵野美術大学映像学科在籍。映像メディアを中心としたアーティストとして活動中。
-略歴-
韓国で2006年夏に実施された国際青少年映像キャンプDINFAC2006に、日本代表として参加。
映画甲子園2006(第一回)最優秀作品賞受賞(「およそ自分」)。
同作品、第19回東京学生映画祭にて招待上映。
POOL JACK主宰
POOL JACK
金 靖浩 武蔵野美術大学映像学科
坪光 生雄 慶應義塾大学総合政策学部
進藤 耕也 多摩美術大学環境デザイン学科
大鷲 一真 多摩美術大学グラフィックデザイン学科
加藤 千歳 東京藝術大学デザイン学科
以上の5名からなるクリエイター集団



●吉田 雅崇
1988年/福島県出身
安積高校(福島県)卒
2007年/武蔵野美術大学 芸術文化学科在籍中