西日本新聞

九州沖の好漁場違法操業急増 日韓タチウオ攻防戦 韓国 不況で減収 量で勝負 日本 資源保護へ 漁獲抑制

2008年11月16日 04:05 カテゴリー:経済

 韓国で人気のタチウオをめぐる日韓紛争が九州沖で激しくなっている。今年、水産庁が拿捕(だほ)した韓国漁船は10月末で17件。うちタチウオ漁が11件と、両国で魚種別漁獲割当量を決めた2005年以降最多。12‐14日、ソウルで開かれた来年の割当量を決める日韓交渉の第1回小委員会は、韓国の増加要求に日本は難色を示し対立。景気後退も絡み、生活防衛と海洋資源保護をかけた熱い戦いが続く。

■開き直り

 「根本の原因は、タチウオの漁獲割当量の不足にある」。4日、ソウルでの日韓漁業取締実務者協議で、水産庁担当官は韓国側の発言に耳を疑った。違法操業をなくすための協議のはずが、韓国側の姿勢は「違法操業やむなし」と、開き直ったようにみえた。

 日韓両国は、互いの排他的経済水域(EEZ)でのタチウオの漁獲量について、日本は年間50トン、韓国は40倍超の同2080トンと設定。許可を受けた漁船は、1日の漁獲量と操業海域を操業日誌に記載し、相手国に毎日報告することが義務付けられている。

 韓国漁船の違反の多くは、漁獲量の過少報告。日誌には「1200キロ」とあるのに、実際は2300キロだった例もある。

 手口も巧妙化。検査の目をくぐり抜けようと、韓国で捕ったタチウオを船の冷蔵庫に用意し日本で捕ったものと交ぜた例もあった。水産庁の指導に、素直に従わない船長たちも多いという。

■死活問題

 韓国側が態度を硬化した理由について、水産庁などは(1)韓国近海で大型タチウオが捕れにくくなっている(2)景気の後退でタチウオ価格が下落した‐の2点を挙げる。

 韓国では、済州島近海のタチウオがブランド魚とされている。しかし、水産総合研究センター・西海区水産研究所(長崎市)は「韓国近海では、大型タチウオは捕り尽くされた感がある。小型のものしか捕れていないようだ」と指摘する。

 九州沖は、体長1メートルの“上物”も豊富な漁場。違法なタチウオ漁による拿捕11件すべてが九州沖に集中しているのもそのためだ。

 韓国は01年ごろからの不動産バブルを背景にタチウオの価格も高騰。福岡市鮮魚市場でも今夏、上物のタチウオに1キロ当たり2000円と通常の2倍以上の値が付いたことがあるが、9割は韓国に出荷された。

 最近の景気後退でタチウオ価格は急落。現在、1キロ当たり1000円を下回る。韓国のタチウオ漁業者は「水揚げを増やさないと、生活できない」と悲痛な叫びを上げる。

■限界超え

 生物学的許容漁獲量(ABCリミット)。これ以上捕れば、海洋資源の枯渇につながる漁獲量の限界を示す数値だ。

 水産庁は、調査結果を踏まえ、東シナ海と日本海のタチウオについて、低位横ばい状態と判断。09年のABCリミットを前年比300トン減の3600トンに下方修正した。

 漁獲割当量を増やせば海洋資源枯渇につながる危険性があり、水産庁は「韓国の要求を認めるのは難しい」との立場だ。さらに、違法操業も早急に取り締まらねば「漁獲枠を設定する意味もなくなる」としている。

 タチウオ漁は、韓国で需要が最も高まる旧正月(2月)に向け最盛期を迎える。日韓交渉は来月がヤマ場とみられるが、例年にない厳しい議論の応酬となりそうだ。

 (東京報道部・吉武和彦)

=2008/11/16付 西日本新聞朝刊=

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