この日記で、自分の野球に対する想いや、「あの時どう考えていたの?」ということ、ほかでは言えないこと、
ほかでは書けないことを書いていくから、試合観戦やテレビ中継と併せて楽しんで読んでください!

2005.2.17

選手の立場

 2月17日午後5時に宮崎の宿舎で今季の契約のサインをしました。グラウンドでは割り切って野球に専念しとるし、練習への影響は全くなかったんやけど、サインをするときは複雑な心境になりました。

 一番感じたんは、選手の立場ってとても弱いってこと。保留権って権利が球団にあって、選手は自由になれない。これまで選手は球団に拘束されて当たり前だって思ってきたけど、おかしいと思うようになった。そりゃ、逆指名で入団したんだから我慢しろって意見も多かったし、それも分かる。でも、俺が入団したときは逆指名って制度があって「入団してください」って言ってくれた球団の中からジャイアンツを選んだだけ。日本のプロ野球で野球をするなら、一番、注目されて設備や環境の整ったジャイアンツがいいと思って選んだんよ。乱暴な言い方になるけど「入れてください」ってお願いして入団したのなら「メジャーに行かせてください」って簡単には言えないけど、必ずしもそうじゃない。もちろん、世話になっているって恩義は感じているし、感謝もしとる。でも、一度しかない自分の人生の目標があって、それを達成したいと思ったときに犠牲にできるもんやない。自分がケガをしてダメになっても一生面倒を見てくれと球団に言えるわけでもないんやからね。

 それでも保留権がある以上、FA権を得るまでは自由になれない。だからお願いしたわけ。だけど、保留権ってどうやって決まったか、勉強したんよ。勉強したっていっても、人から聞いただけやけどね。まず疑問に思ったのは、サッカー界は1年おきの契約で、なんで野球界は経営者側に長い保留権があるかってこと。サッカー界のほうが人権に配慮しているってことらしい。でも、メジャーにも保留権があったし、今でもある。だから日本も見習って保留制度を作ったって話を聞いた。

 ただ、メジャーと日本では、今の保留制度ができるまでの過程に違いがある。メジャーでは裁判だか何かの手続きで一旦は保留制度は無効だということになったらしい。でも、全選手が自由ということになると、努力しない選手や活躍しない選手まで年俸が上がってまうことになり、それが問題になった。経営者側が困れば、頑張った選手の年俸が上がらんやろ。だから経営者側と選手会とで一定の保留制度を作ろうって話になって、6年間でFA権っていう権利が取れるようになったわけや。要はメジャーでは最初に人権が尊重されていて、保留権がゼロの状態から選手会と経営者側が話し合って決まったこと。でも、日本は最初に無期限の保留権があって、それからFA制度ができた。FA権取得までの期間が長いのは、経営者側の意見が強いから。それで今でもFA権取得までの期間を短くしろとかで選手会と経営者側がもめるんよ。本来の姿は、保留権がなしの状態から選手会と経営者側が話し合って期間を決めなければいかんことなんや。球界再編の年っていうなら、もっとそういう論議をして早く新しい制度を決めてほしいね。

 ポスティング制度だって、最初からなければ俺も頼まへんし、こんなことにならなかった。入団してから認めてくれる球団と認めない球団があるのもおかしいやろ? ジャイアンツが検討してくれても出せない、っていうのも分かるし、俺の方も制度があるから頼んだだけ。まぁ、そんな簡単な気持ちで頼んだわけやないけどな。

 最終的には、今後もメジャー入りはお願いしていくつもり。途中の報道を通して「上原は金でもめている」とか「最初からダメと言っているのに上原はわがままを主張している」とか、事実と違うように伝わっていった。ルールに乗っ取ってお願いしたし、最終的に今季はダメやったけど、話は聞いてくれてた。保留権の問題もそうだし、黙っていると、どんどん悪いように伝わってしまう。だから代表には、その辺のことちゃんと説明してくださいってお願いしたんや。

 心の底から納得したわけやないけど、一応の区切りはついた。今までも野球に専念してたし、頑張ることは変わらない。ここまでのキャンプも、今までにないぐらい順調に進んどる。張り切りすぎてケガをしないように頑張るで! 心配してくれたファンや、応援してくれたファンのみんなには、心から感謝してます。ありがとな!

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