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社説2 ネットから個人情報を守ろう(11/16)

 自分の子供の名前や住所がインターネット上の地図に目印付きで公開されていたら。そんなぞっとする出来事が全国各地で起きた。学校の教師が家庭訪問用に作った地図が外部から閲覧されてしまったのだ。

 子供の個人情報が漏れていたのは青森県八戸市、長野県飯田市など報道されただけでも10件以上に上る。米検索大手、グーグルが無償で提供するデジタル地図情報サービスを教師が誤って利用していたためだ。

 グーグルの地図では目的地の情報や最短ルートなどを自分専用の「マイマップ」としてサーバーに保存できる。その際、情報を公開するか否かを選べるが、教師は初期設定である「公開」のままにしていた。

 都市部では状況がさらに深刻だった。グーグルは通りの様子を写真で360度見回せる「ストリートビュー」という新機能を8月から追加。名前や住所だけでなく、子供が住む家屋の写真まで見えたからだ。

 ストリートビューはパノラマカメラを積んだ車が街中を走り、カーナビの全地球測位システム(GPS)情報を頼りに地図にはり付ける。米国では日光浴中の水着姿を撮影されたなどプライバシー侵害を指摘する声が高まり、明確に顔が写っている場合はぼかすようにした。

 問題はこうした新技術をどう活用するかだろう。デジタル地図や写真は現地に行かなくても周辺環境がわかるため、不動産案内や荷物配送などに役立つ。経済産業省にも問題を指摘する声が寄せられたが、「法律に違反しない以上、規制すべきでない」(情報経済課)という。

 今回の問題は教師のミスが原因だが、初期設定を「公開」にしているグーグルに対しても疑問を向ける声がある。無償サービスとはいえ、どちらを選ぶか確認を促すような画面の工夫が今後は必要だろう。

 一方、利用者も注意が必要である。最近はネット上で友人と情報交換するサービスが人気だ。日記代わりにネットを使う若者も多いが、情報が漏れる危険性を絶えず忘れてはならない。学校でも今後はネットの使い方を教えていく必要があろう。子供のほうが詳しいといわれるが、教師に対する教育も必要だ。今回の出来事はそれを端的に表している。

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