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NIKKEI NET

社説1 国内外の利益バランス問う企業決算(11/16)

 上場企業の2009年3月期決算は、7期ぶりの経常減益が避けられない見通しとなった。円高や上期の原材料高に加え、金融危機の波及による世界的な景気減速が響く。

 米国での需要低迷で利益が急減するトヨタ自動車にみられるように、外需への依存度が高い企業の大幅減益が目立つ。海外市場の開拓は企業の成長のため重要だが、経営を安定させるには国内事業の収益力を改善し、国内外でバランスのとれた収益構造にすることも必要であろう。

 日本経済新聞社の集計では、上場企業の今3月期の経常利益は前期比で約25%減となる見込みだ。海外での売上比率が高い自動車、電機の落ち込みが目立ち、それぞれ6割弱、3割強の減益となる見込み。厳しい経営環境は来年も続きそうだ。世界銀行は世界全体の成長率を1%と予測している。

 輸出型企業はこれまで米国の住宅バブルや過度な消費、日本の低金利も反映したドル高、ユーロ高で収益をかさ上げされてきた面がある。長期的には新興国を含め海外に市場を求めるのは必要だが、今回のような主要国でのバブル崩壊、景気後退といったリスクがつきまとう。

 一方、日本は人口減少や高齢化が進んではいるものの、なお1億2000万人以上を抱え、世界第2の経済規模を誇る。足元の市場で収益性をもっと高める工夫があってよい。

 現状は企業によって悪い材料ばかりでない。例えば、資源、食料の価格低下や円高で輸入コストが下がる。東京電力は原油価格が1バレル当たり1ドル下がると燃料費が年180億円減る。ドルに対して1円の円高でも210億円の費用減になる。

 これらコスト減も追い風にして、例えば自動車産業なら二酸化炭素の排出量が少なく価格も安い車を開発する。買い替え需要が国内に生まれよう。少子・高齢化で医療・教育分野にも潜在的需要があるはずだ。製品開発が重要性を帯びてくる。

 また日銀短観によると、多くの大企業では国内で慢性的な供給過多にある。経営の効率改善や技術革新の加速につながる企業再編も対応策の1つだ。その意味で電機業界の大型再編となるパナソニックによる三洋電機の子会社化は注目に値する。

 大企業は近年、増益下でも賃上げを抑えてきた。今後、仮に多くの企業が大幅な賃下げや人員削減に向かえば、再び深刻なデフレを引き起こしかねない。収益の落ち込みが比較的少ない企業の経営者は、賃金や人員計画の策定にあたり、このあたりを念頭に置いてほしいものだ。

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