社説

フロント > 県内ニュース一覧 > 記事詳細

並行在来線 地方任せを見直すとき

11月14日(金)

 長野以北のJR信越線は存廃の岐路に立たされている−。国土交通省が、与党の整備新幹線建設促進プロジェクトチームに示した並行在来線への新たな支援措置案を見ると、そんな危機感に襲われる。

 国交省が示したのは▽貨物調整金の拡充▽税制優遇措置の期間延長−の2項目である。

 このうち貨物調整金は、貨物列車の通過が少ない長野県にとっては切り札にはならない。固定資産税などを減免する期間の延長にしても一時しのぎだ。関係するほかの県にとっても、満足のいくものではないだろう。

 長野県が期待している運行経費への補助金といった支援策と比べると、心もとない。国交省は、これまでの発想を転換して対策を打ち出してもらいたい。

 北陸新幹線長野−金沢間が2014年度末に開業すれば、長野、新潟の両県をまたぐ信越線長野−直江津間は並行在来線としてJRから経営が切り離される。これは政府・与党が1990年に合意した原則に基づく。

 地域の足は地域で維持を、という考え方だが、自治体の台所が苦しいなか、現実には難しい。並行在来線を、地方に押しつけるやり方がいいのか、原則を見直すときにきている。

 県内には先例がある。1997年に開業した第3セクターのしなの鉄道(上田市)である。整備新幹線開業に伴って経営分離された並行在来線の全国第1号だ。

 信越線軽井沢−篠ノ井間を引き継いだものの、多額の減価償却費が重荷となり、経営が悪化した。県が103億円の貸付金を事実上手放す支援をして、なんとか再建へ踏み出した。県民の大きな後押しがあるからこそ、ようやく運行が続けられている。

 長野以北はさらに深刻だ。しなの鉄道に比べて乗降客は少なく、除雪費もかかるからだ。県の試算によれば、たとえ新会社が駅舎や線路などを無償で引き受けても、経営は単年度で黒字になる見込みはない。並行在来線は、どこも苦労している。

 4月に着工した九州新幹線長崎ルートに注目したい。沿線自治体が経営分離に同意しなかったため、JR九州が並行在来線を新幹線開業後20年間に限り、運行することになった。

 長野以北も、JRが運行するのが一つの手だ。JRに頼ることが難しい場合は、地元や国も含めた枠組みを考えるべきだ。県は先頭に立ってもらいたい。

クリック!ネットで一言