米海軍佐世保基地(佐世保市)所属の米兵ら向けの米軍準機関紙「星条旗新聞」(スターズ・アンド・ストライプス)が基地施設内で米大統領選報道の取材を禁じられたとして、米国防総省に「報道規制は合衆国憲法違反だ」などと反発していることが分かった。同基地の中でも「民主主義に反する」と不快感を示す米兵は少なくなく、言論の自由をめぐる国家と報道機関の対決が注目を集めている。
オバマ氏当選を伝えた7日付の同紙によると、国防総省報道官が「いかなる新聞記者も基地施設内で、選挙結果について取材することは許さない」と同紙の取材を規制した。これに対し、同紙は編集局長のコメントとして「法律で認められた記者の職務を妨害する行為だ。報道の自由を定めた合衆国憲法にも反する」と強く非難した。
国防総省は1月に大統領選に関する発言や手記発表などを禁ずることを各基地に通達。政府機関として「無党派」であるべきだとし「記事を書かれることで、どちらの候補が好きか、嫌いかという印象を与えかねない」との見解を示していた。
国防総省報道官は同紙の取材に「基地施設外で勤務時間外の取材は自由だが、もし米兵が愚かなことを言ったら、昇進面で不利になるだろう」とも警告したという。
国防総省の命令を受けた佐世保基地は取材を規制。このため、通常は同基地内で取材に当たっている同紙記者も基地正門外での取材を強いられたという。韓国の基地でも同様に規制された。
佐世保基地所属の米兵の1人は「報道の自由は米国民にとって最も大切な権利。米兵である私たちも1人の人間であり、自由にコメントすることを規制されるのは民主主義に反する」と話している。
=2008/11/15付 西日本新聞朝刊=