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ペン&ぺん:暴走する「世間」 /福岡

 学問とは縁遠い生活を送りながら、特ダネ欲しさのため学会のメンバーに名を連ねたことがある。無知を恥じつつ大勢の専門家とひざを交えると新たな発見の連続。定説を覆すような研究に出くわし、記事掲載を巡ってあたふたしたものだ。

 日本学術会議によると、学会は同会議指定の協力団体に限っても1678(9月末現在)ある。読書学会や人間関係学会、失敗学会、マンガ学会など身近に感じられる団体も少なくないが、日本世間学会については最近まで存在を知らなかった。生きにくい時代になり、「キレた人たち」による犯罪が多発する社会の原因、背景を、「世間」をキーワードに解き明かすのが狙いという。

 10年前、設立を呼びかけたのが、佐藤直樹・九州工業大教授(刑事法学)だ。法律関係の学会を「保守的でエラソーだし就職のあっせん機関に成り下がっている」と批判し脱会。その経験から「つまらぬしきたりにとらわれない『出入り自由』な学会」を目指した。

 端正な顔立ちと穏やかな物腰の元学生運動の闘士。学生時代、警察に拘留されたが、当時の悔しさと、後の離婚が、世間を考えるきっかけとなった。「離婚の際、自分の意思決定というより、周囲の人たちとの関係で『なるべくしてなったのでは』と思えた。集団的強制力のようなものが『世間』なんです」

 その世間が「最近、暴走している」という。経済格差の拡大が、将来に希望を持てる層と持てない層の「希望格差社会」を招き、自暴自棄という動機を醸成。「大阪教育大付属池田小乱入殺傷事件(01年)や奈良小1女児誘拐殺害事件(04年)、秋葉原通り魔事件(今年6月)など『ヤケクソ型犯罪』を誘発しているとみられます」と分析する。

 暴走を食い止めるにはどうすればいいのか。世間学会の目下の課題だが、あまたある学会も早急に取り組むべきテーマだ。【大久保資宏】

〔北九州版〕

毎日新聞 2008年10月27日 地方版

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