10日に手こぎ自転車で東京を出発した障害者プロレス団体「FORCE」(福岡市)代表の永野明さん(33)=東京都北区在住=が19日夕、ゴールの福岡市に到着した。障害者の自立を訴え、街や道路のバリアフリーの実態を確かめようと挑戦した10日間。同市中央区であったゴールを祝うイベントには約300人が詰め掛け、1200キロを走破した偉業を祝福した。
「ありがとう。障害があってもやりたいことには挑戦してほしい」。到着したプロレスのリング上でふらふらになりながら言葉を絞り出すと、「おめでとう」の声と拍手が永野さんを包んだ。
福岡市に生まれた永野さんは1歳で脳性まひになり、四肢に障害があったため22歳まで在宅心身障害児者施設のやすらぎ荘(筑前町)で療育訓練を受けた。その後、印刷会社に勤めながら「FORCE」を設立。鍛えた腕の力を生かし、手こぎ自転車で故郷を目指すという挑戦に臨んだ。
道中、永野さんは道路を走って気付いたことなどを毎日、写真や文章で記録。整備されていない歩道に何度も遭遇し、草に覆われた側溝に危うく落ちそうになることも。「走った自分にしか分からないことが多くあった」と話し、「今後は各自治体に改善を呼び掛けていきたい」と意気込む。
心残りは山口県岩国市の峠を超えられなかったこと。再びチャレンジしたいと話し、「この経験を生かして手こぎ自転車でパラリンピックに挑戦したい」とも誓った。
=2008/10/20付 西日本新聞朝刊=