主に幼少時や思春期に発症する「1型糖尿病」と闘う福岡県の子どもたちが病気との向き合い方を学び、悩みを分かち合うサマーキャンプが今年で40周年を迎えた。患者が少ないこともあり、周囲の無理解や偏見に遭うことも多い子どもたちに、生きる力や希望を養う場となっているキャンプ。40年の記念の集いが11月1日、福岡市で開かれる。
●11月1日福岡市で集い「理解広めたい」
8歳から参加し、今は子どもたちを世話するボランティアの倉内祥太郎さん(26)=福岡市早良区=は小学生のころ、同級生に「病気は食べ過ぎのせいだろう」と言われて傷ついた。また、教室で注射器を使うたびに好奇の目で見られたり、低血糖になってブドウ糖をなめると「どうして君だけお菓子を食べていいの」と言われたりした子もいる。そんな中、倉内さんは「キャンプで仲間と悩みを語り合い、乗り越える力に変えることができた」と話す。
キャンプでは医師から血糖値を下げるインスリンの注射方法を学び、食事や運動の指導を受けて病気を自己管理するすべを身に付ける。同時に、友達をつくり不安をぬぐう出会いの場でもある。
1963年に千葉県で初めて開かれ、福岡県では69年、九州大医学部講師だった平田幸正・元東京女子医大糖尿病センター長らの呼び掛けで、熊本県とともに全国二番目に始まった。74年から毎年8月、福岡県筑前町の在宅心身障害児者療育訓練施設「やすらぎ荘」で開催。今年も5歳から高校1年生までの42人が、医師やボランティアたち約60人と一週間の共同生活を送った。
記念の集いには関係者約160人が参加。キャンプの40年間を写真や映像で振り返り、平田医師らに患者たちの思いをまとめた文集を手渡す。
自治体によっては教室での注射器使用を認めず、インスリン注射には保健室に行かなければならないなど不自由を強いられている現状がまだある1型糖尿病。キャンプの事務局を担当する岡田朗(あきら)医師(52)=福岡市東区=は「患者は普通の子どもとしての扱いを求めている。これを節目に、病気への理解が社会で広がれば」と話している。
× ×
●ワードBOX=1型糖尿病
主に自己免疫によって膵臓(すいぞう)のβ細胞が破壊され、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が分泌されなくなる疾患。「小児糖尿病」とも言われる。遺伝などによる複合要因とみられ食べ過ぎなどとは無関係に発症、中・高年に多い生活習慣が影響する「2型」とは原因が異なる。発症率は10万人に1.5人。糖尿病患者全体に占める割合は約5%。1日数回の血糖値測定とインスリン注射が欠かせない。
=2008/10/29付 西日本新聞夕刊=