瀬戸の都高松と、芸術の都、華の都、美食の都パリに共通し、なおかつ高松が勝る点がある。と言うと、高松市民の芸術への理解や上品さ、うどんへのこだわりなどが思い浮かぶ人もいるだろう。それが的確かどうかはさておき、ここで触れたいのは自転車の話だ。
ともに大規模なレンタル自転車を行っている。高松は放置自転車対策で7年前に始めたが、パリは環境対策に昨夏スタートした。高松同様に結構な人気で、先ごろ訪れた時にはよく見かけた。
基本料金は1日1ユーロ(120円余)で、これは高松(100円)とほぼ互角だ。パリには無人の貸出機が1600カ所にあり、台数は計1万5000台。高松は七カ所、1000台とはいえ、人口差を考えると負けてはいない。
差がつくのは利便性だろう。パリは借りる際のハードルが高いのだ。機械は何とか英語で操作できたが、クレジットカードで登録が必要な上、150ユーロの保証金が求められる。しかも自転車をきちんと返しても、誤って引き落とされることもあるという。
その点、高松は観光客にも優しい。例えば免許証など公式な身分証明書を持ち合わせていなくても、融通が利く。保証金もいらない。何より、まだまだ性善説がまかり通っているのはすばらしい。
ただし採算性だけは高松が分が悪い。パリが短期間で大がかりにできたのは、広告会社と提携し財政負担がかからないようにしたからだった。それさえクリアできたなら、そのとき高松はパリを完全に凌駕(りょうが)する。