松田優作　知られざる素顔　前妻・美智子さん、評伝出版 (2/2ページ)

　こうした裸の優作を描きながら、松田さんにはひとつはっきりさせたいことがあったという。

　「ぼうこうがんに侵されていた優作は、死を覚悟してハリウッド映画『ブラック・レイン』に臨んだという逸話に、私はずっと違和感を覚えていました。だって死を覚悟した人間が、運転免許を取ったり、英会話の教師を探したりすると思いますか。優作は自分が死ぬなんて考えてもいなかった。次の作品を夢見ながら亡くなったんです」

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　松田さんは最晩年の優作の知られざる事実も明らかにする。がんに侵された優作が、義母の紹介で新興宗教にはまっていたこと、さらには主治医とのオカルト的な不可思議な関係…。ただ、妻の美由紀さんには取材していない。

　「なぜって？　彼女はすでにいろんなことを書いているでしょう。取材してもそれ以上のことが出てくるとは思えないから。彼女にも守らなければならないものがあるんですよ、きっと」

　そう説明する松田さんに、優作とのもっとも鮮烈な思い出は？　と問うと、しばらく考え込んだ後、こんな答えが返ってきた。

　「それは、離婚です」（桑原聡）　

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【プロフィル】松田優作

　まつだ・ゆうさく　昭和２４年、山口県下関市に生まれる。４８年にテレビドラマ「太陽にほえろ！」のジーパン刑事役で人気俳優となる。映画にも進出し「人間の証明」「蘇る金狼」「陽炎座」「家族ゲーム」などで好演。平成元年にハリウッド映画「ブラック・レイン」に出演し成功を収めるが、同年１１月にぼうこうがんで亡くなる。