2008年11月15日

平成20年度口述試験成績

今日、届いていました。

得点 303点
順位 24位

でした。

司法試験は通ることができましたが、試験を通じて
まだまだ至らない点があることを痛感しているので、
これに満足することなく、実務に出ても困らぬよう、
時間のあるうちは勉強していきたいと思います。

記事の投稿はこれで最後にします。
(コメントがあれば返信はさせていただきます。)

再現と成績は、消さずに残しておきます。
参考になる点があれば本望です。 

2008年11月13日

平成20年度旧司法試験最終合格発表

合格していました。よかったです。

明日、成績通知が発送されるようなので、その結果を
ご報告してこのブログは一区切りとしたいと思います。

2008年10月28日

口述試験を終えて

感想を少しだけ。

【全体】
とにかく待ち時間が長かったですが、あまり
待たされたという感じはしませんでした。
発射台で1時間弱待たされた日もありましたが
そんなに長く待ったという感じではありません
でした。それだけ、精神的に張りつめていた
ということでしょうか。この3日間は、とても
良い勉強になりました。口述試験は9割が受かる
ため実施する意味がないという意見がありますが、
実際に受けてきた身としては、とても有意義な
3日間だったと思います。

【憲法】
主査の先生がとても温和な方で、緊張感が一気に
解けました。受け答えもスムーズに進み、思った
よりもしっかりと会話ができたな、というのが
率直な感想でした。副査の先生は暇そうで、
腕を組んでふんぞり返っていました。

【民事系】
開始早々、関西弁でまくしたてられた上に、最初の
質問でつまづき先生が顔をしかめ、さらには条文の
間違いを強い語調で指摘され、心拍数は一気に上がり
ました。心臓がバクバクいってました。その後も典型
論点で何回かつまづき、最後は先回りして答えを言って
しまったらしく、両先生ともに苦笑いでした。
最後のカードまでたどり着けたのが唯一の救いでしたが、
手ごたえは悪く少々落ち込みました。

【刑事系】
刑法の先生は冷徹な印象で、無表情に質問を投げかけて
きました。ただ、淡々と質問が進んでいったので、前日と
違って落ち着いて回答できました。
刑事系の先生は刑法の先生程ではないですが、こちらも
無表情で、淡々と質問が続けられました。
手ごたえは、前日に比べれば格段によかったと思います。

以上です。
あとは来月の合格発表を静かに待ちたいと思います。


2008年10月27日

平成20年度旧司法試験口述再現(刑事系)

失礼します。○組○番です。

はい。お座りください。

よろしくお願いします。

では、事例を言うので机の上にあるカードを見ながら聞いてください。
X社の従業員であるBは自己の遊興費を稼ぐため、日頃から取引をしているZに対して、Yからの注文があったような架空の請求を作り上げて、コンピューターを発注しました。Zから納品を受けたBはそれを第三者に転売し、利益を得ました。
この事例でBには何罪が成立しますか。


背任罪が成立します。

他には。

詐欺罪が成立すると思います。

他は。

…。背任罪と詐欺罪のみです。

分かりました。では、先に背任罪の方から検討しましょう。背任罪はどういった場合に成立しますか。

他人の事務を処理する者が、図利加害目的で財産上の権限を濫用して任務に違背し、本人に財産上の損害を与える行為です。

いまあなたは任務違背と言いましたが、Bにはどのような任務があるのですか。

Bの従業員なので、被雇用者としての任務があると思います。

では、どの行為が任務違背に当たるのですか。

転売行為です。

ということは、Zに対する発注や納品を受ける行為は、犯罪に関係ないということですか。

いえ、その行為も含めて任務違背行為に当たると思います。

一連として考えるということですか。

はい。

では、この場合、Zが納品したコンピューターの占有は誰に属しますか。

X社に属すると思います。

そうですか。例えばX社が小さい会社で、従業員がBの他に数名しかいない場合でも、そうなりますか。(もう少し違ったニュアンスの質問だった気がしますが、思い出せません。とにかく、Bの占有を認めさせたような誘導でした。)

その場合には、Bに占有が属すると思います。

そう考えると、この事例ではどうなりますか。

どういった犯罪が成立するかということでしょうか。

はい。

業務上横領罪が成立すると思います。

横領罪はどういった場合に成立しますか。

自己の占有する他人の物を、委託信任関係に背いて横領する行為です。

横領とは具体的にどういった行為ですか。

不法領得の意思の発現行為です。

不法領得の意思とは?

他人のにつき権限がないのに、その権限を逸脱してあたかも自己の所有物であるかのごとく扱う意思です。

本問の事例ではどの行為が横領に当たりますか。

Bが自己の利益を得るためにコンピューターを転売した行為です。

先ほどあなたは、背任罪が成立すると言いましたが、そのように考えると背任罪はどうなりますか。

成立しません。

何故ですか。

背任罪よりも重い業務上横領罪が成立するからです。

そうすると、重い犯罪が成立する場合は常に軽い犯罪は不成立ということになりませんか。

いえ…。背任罪は権限濫用行為、横領罪は権限逸脱行為と考えるので、背任罪は成立しないと思います。

権限の濫用と逸脱の関係は?

濫用行為に逸脱行為が含まれます。

濫用行為の方が広いということですか。
では、あなたは先ほど詐欺罪も成立すると言いましたが、この場合は誰に対する詐欺罪ですか。


Zに対する詐欺罪です。

Bのどの行為が欺罔行為に当たるのですか。

Y社からの注文が無いにも関わらず、コンピューターを発注する行為です。

でも、BZ間においては、通常通りの取引がなされているのですよ?

はい。ですが、Zとしては、発注が架空の請求をもとにしていると分かれば、Bに納品しないと思われるので、それを隠して発注するBの行為は欺罔行為に当たるのではないかと思います。

しかし、そうだとしても、Zは納品すれば代金を取得するので損害はありません。その場合でも詐欺罪を成立させるのですか?

詐欺罪は個別財産に対する罪なので、コンピューターの引渡し自体を損害と考えます。

あなたの考えだと、業務上横領罪との関係はどうなりますか。

観念的競合…

(このあと実体としては同じ事実だ、という趣旨の指摘をされるが、詳細は失念)

いや、併合罪…でしょうか。

そうですか。以上です。

では、刑事訴訟法は私から聞きます。
先ほどの事例でBに詐欺罪が成立するとしましょう。これをA事実とします。その1年後、余罪としてBは同様の手口で詐欺罪を行いました。これをB事実とします。A事実とB事実は併合罪関係にあるとしましょう。この前提でお話をします。
警察官がA事実でBを逮捕しましたが、証拠不十分で釈放しました。その後、警察官が新たにBを逮捕することはできますか。


原則としてできません。

では、例外的にできる場合はあるのですか。

あると思います。

それは何か理論上もしくは条文上の根拠はあるのですか。

条文上は199条3項が再逮捕を前提とした規定となっています。

理論上は?

新たな証拠の発見などの新事情がある場合で、再逮捕が不当な蒸し返しとならないような場合は再逮捕も許されると思います。

では、警察官の捜査により、新たな証拠が発見された場合は、Bの再逮捕も許されるのですね?

はい。

ところで、逮捕に時間制限があるのは知ってますか。

はい。72時間の制限があります。

そうですね。例えば、今の事例で警察官が72時間を使いきっても証拠が発見できず、その後、再逮捕をしようとした場合、結論は変わりますか。

その場合でも新証拠の出現という事情があれば再逮捕は許されると思います。

時間的な要素は影響しないということですか。例えば、警察官の捜査が怠慢で、72時間以内に証拠が発見できなかったような場合でも?

そのような事情があれば、逮捕の不当な蒸し返しとして、再逮捕を許すべきではないと思います。

でも、その事情はどうやって裁判官は判断するんだろうか。まさか警察官が、自ら捜査の怠慢を認めるような資料を提示するわけないよね。そうすると、ほとんどの場合、再逮捕が認められてしまうことになりませんか。

確かにそうです…。

裁判官はどうやって、逮捕の不当な蒸し返しかどうかを判断するの?

逮捕状を請求する際の資料等を見て判断するかと思います…。

(この後、答えらしき事を教わるが、初めて聞いたような内容で、残念ながら失念)

じゃあ、事案を変えて、A事実で逮捕して、B事実で勾留請求することは可能ですか。

できません。

なぜですか。

事件単位の原則を適用するからです。

そうですか。他に根拠は考えられますか。B事実に関しては勾留から始まっているわけですが。

逮捕前置主義に反します。

それは何か理論上もしくは条文上の根拠はありますか。

はい。207条1項が「前三条による」としており、勾留請求に際しては逮捕が前置されることが当然の前提となっています。

それでは、A事実で逮捕して、A事実に加えてB事実を根拠に勾留請求してきた場合は?

その場合は認められると思います。

でも、その場合はB事実に関して、逮捕前置主義に反しませんか?

確かに逮捕は前置されていませんが、B事実に関して別個に勾留請求がある場合に比べて、身体拘束期間が短くなり被疑者に有利なので、そのように考えても問題ないと思います。

ではそれに加えて全く関連性のない、例えば傷害罪にしましょうか、C事実を加えて勾留請求してきた場合はどうなりますか。

…その場合も許されると思います。

関連性は要求しないというわけですか。
では、事例に戻りまして、検察官が詐欺罪で逮捕されたBを、詐欺罪は成立せず業務上横領罪が成立すると考え、業務上横領罪で勾留請求しようとしました。許されますか?


逮捕前置主義に反するので許されません。

そうですか。しかしそうすると、業務上横領罪で再び逮捕してから勾留請求するということになり、面倒ではありませんか。

はい、確かに面倒になります…。

この場合、警察官が詐欺罪として送致してきているわけだけど、警察官って法律の専門家ですか?

いえ、違います。

そうだよね。だとしたら、法律の専門家としての検察官が業務上横領罪と判断したら…(この後、答えらしきものを教わるがここも始めて聞く議論で残念ながら失念)

じゃあ、詐欺罪で勾留がなされたとして、起訴は業務上横領罪でなされました。そしてBは業務上横領罪の罪で勾留されました。この勾留に問題はある?

被告人勾留には逮捕前置主義が妥当しないため問題はありません。

この場合、誰が勾留するの?

裁判所です。

第1回公判期日前は?

裁判官です。

そうすると、詐欺罪の罪で勾留されていたBは一旦釈放されることになるのでしょうか。

形式的な釈放はなされると思います。

この場合、裁判官はどうやって勾留の許否を判断するの?(もっと考えさせるような質問がなされたはずだが失念)

えっと…、この場合は280条1項によって勾留するわけですから…

2項ですね。

…。う〜ん…。

職権の発動を促すことって知らない?求令状って聞いたことない?

あっ、はい、聞いたことがあります。

じゃあ、事例を変えて、詐欺罪で公判期日が進められましたが、検察官は業務上横領罪でBを有罪としたいと思い直しました。このままで、Bを業務上横領罪で有罪にできる?

訴因変更が必要です。

この場合の訴因って何?

検察官が具体的に主張する事実です。

でも、事実はさっき刑法の時に出てたように、実体として同じ事実なんでしょ?それでも訴因変更が必要なの?

そうすると、法令の適用の変更となるのでしょうか。

君、見たことあるかどうか知らないけど、起訴状って何が書いてある?

罰条や被疑事実が書いてあります。

詐欺罪と業務上横領罪では異なるのは罰条だけ?

本事例では実体としての事実は同一ですが、構成要件が両者で異なるので、被疑事実の書き方は変わってくると思います。

そうだよね。そうすると訴因も変わってくるよね。

じゃあ、裁判所はBに詐欺罪ではなく、業務上横領罪が成立すると考えたけど、検察官は訴因変更請求をしてこない。この場合、裁判所はどうする?

訴因変更命令をします。

いきなり?

いえ、まず、検察官に訴因変更を促します。

それって何て言うの?

求釈明です。

求釈明ってどういうもの?

釈明を…裁判所が…促す(ここで混乱)

文字通り、釈明を求めるんでしょ。
でも、裁判所が、業務上横領罪が成立するかもしれないという心証を公開法廷で述べてもいいのかな?


う〜ん…、証拠に顕出された事実をもとに釈明するのであれば…

まあ、その点はいいです。ではこの場合、裁判所に訴因変更命令の義務は生ずることはありますか?

証拠上、犯罪が成立することが明白で、その犯罪事実が重大である場合は義務が生ずると思います。

この事案に当てはめてみて。

証拠上、業務上横領罪が成立することが裁判所にとって明白で、その罪は重大なので、義務が生じます。

では、最後にもう一つだけ。裁判所は逆に詐欺罪が成立すると考えているのに、検察官が業務上横領罪の訴因変更請求をしてきた。裁判所はこの場合、どうしますか?

訴因維持命令を出します。

条文上の根拠はありますか。

ありませんが、312条2項の趣旨から認められると思います。

では、訴因維持命令を出したにもかかわらず、検察官が訴因変更請求を取り下げない場合、裁判所はどうしますか。

訴因変更請求を認めざるを得ません。

そうすると、審理の結果、Bの罪責はどうなりますか。

裁判所は詐欺罪の心証を得ているので、無罪となってしまいます。

その結論は不当ではありませんか。

不当です。

その不当な結果の原因はどこに起因するのでしょうか。

検察官が訴因変更維持命令に従わずに、訴因変更請求をし続けた結果だと思います。

当事者の意思を尊重し過ぎた結果、ということだね。以上です。

ありがとうございました。
失礼します。


2008年10月26日

平成20年度旧司法試験口述再現(民事系)

※記憶が曖昧であるため、不正確な再現部分もあります。
※時間は30分くらいでした。

失礼します。○組○番です。

どうぞ。お座りください。
では始めます。机の上のカードを見てください。事例を言います。
Xが死亡しその妻Aと未成年の嫡出子B・CがXを相続しました。Xの有していた甲不動産をAが、乙不動産をBが、丙不動産をCが相続したとします。その後、AがCの代理人として、自己の借金返済に当てるために丙不動産を売却しました。ここまでが事例です。
では、ここからが質問です。Aの代理権に制限はありますか。


…はい。ないと思います。

ホントに?

Aは親権者として包括代理権を有しているので制限はないと思います。

全く無いの?

いえ、Cの居住用の不動産を売却する場合には家庭裁判所の許可が必要なので、制限はあります。

他には?

あとは、利益相反行為にあたれば、Aの代理権は制限されます。

それぞれ条文は分かる?

居住用の不動産を売却する場合の条文は850条あたりだったと思いますが、細かくは分かりません。利益相反行為は824条です。

ホント?机の上の条文見てみなさい。

…あ。826…。

いや、言わなくてもいいよ。僕らは分かっているから。受験生でよくある間違いで一番いけないのがそれだ。違っているのに自信を持って「はい。○○条です。」という。そういう間違いは駄目だ。分かったね?

分かりました。すみませんでした。

では続けます。本事例においてはAの行為は利益相反行為に当たりますか?

いえ、当たりません。

なぜ?

利益相反行為か否かは客観的に判断すべきなので、本事例では客観的にはAの利害には関わらないからです。

「客観的」? それってどういうこと?

客観的な事情から利益相反に当たるかどうかを判断するということです。

何で客観的事情に限るの?

主観的事情を考慮に入れてしまうと、認定が困難になるからです。

他の説は知ってる?

主観的事情から利益相反か否かを判断するという説があります。

主観的事情だけ?

いえ、主観的事情と客観的事情をともに考慮して利益相反か否かを判断します。

総合考慮ということだね。判例はさっき君の言ってた考えと同じなの?

同じだったと思います。

何て言ってたか知ってる?

すみません。詳しくは分かりません。

判例は「外形的事情」に基づいて判断すると言ってたんだね。まぁ、いいや。
それじゃ、本事例では利益相反に当たらないという結論を採るから、Aの行為はCに帰属するわけ?


いえ、効果帰属しないと思います。

なぜ?

権原濫用にあたるからです。

権原濫用ね…。根拠条文は?

93条但書の類推適用です。

でもさ、さっき君は利益相反にあたるかどうかで客観的事情しか考慮しないと言っておきながら、ここではAの主観を考慮して効果帰属しないとするのはおかしくない?

はい。確かにおかしいです…。

客観的事情しか考慮しないっていうのは、さっき君が言ってたような認定の困難だけが理由なのかな?それじゃ、ここでは訴訟法上の問題だけってことか。

いえ…。(ここで、何とか論理矛盾しないような説明をしようと試みるが、結論にたどり着けず)

まあ、いいや。ここでは取引の安全というものを考慮に入れているんだ。だから、判例は客観的事情しか考慮に入れていないと言っているわけ。(このあと93条但書類推適用との論理矛盾がない説明をされる。)

それじゃ、次のカードを見てください。
AがCの丙不動産を内縁の妻であるEに売却しました。この場合は利益相反行為に当たる?


いえ、外形的事情に基づいて判断すると、Aの利害に関わらないので、利益相反行為にはならないと思います。

そう…。でも、判例は内縁の妻に関しては、内縁の夫は自己の利益に準ずる利害関係があると言っているんだよ?

その考え方によれば、Aは自己に丙不動産を売却させたのに類する利害を持っていると言えるので利益相反行為に当たると考えるべきだと思います。

じゃあ、ここでは利益相反行為に当たるとしよう。その後、Cが死亡してAが単独相続しました。Aの売却行為はどうなる?

えっ…と、無権代理人が本人を相続した場合なので…、有効になると思います。

いつから?

AがCを相続した時から…

えっ?相続した時から?

いや、Eが丙不動産の引渡しを請求した時から…

そう考えるわけだ。まあ、いいや。じゃ、次のカードを見てください。
今度はBとCが成年になったとしよう。そして、CがEに対して丙不動産につき抹消登記の訴えを起こしてから死亡したとしよう。それでCをAが相続した。その後、Aが死亡してBが相続したとする。Aのなした売却行為は有効になる?


この場合は有効にすべきではないと思います。

なんで?

そうしないとCに酷だからです。

酷?(冷笑) でもさっきは、有効になったんでしょ?どう違うの?

あっ…。この場合はCは無効を主張しても禁反言とならないからです。

うん。だから、一つ前の事例と矛盾無く説明するためには、さっき君が一つ前の事例で説明した考え方を採ると厳しいんだよね。(うまく説明する考え方を教えられる。)
それから、もう一点。今の事例で私は最初に、Cが訴え提起をしていると言いました。この場合、Cの追認があったと言うことはできない?そこら辺、もう一度よく考えてみてね。
民法は以上で終わります。


それでは民事訴訟法は私から聞きます。次のカードを見てください。
Xは自己所有の土地上に建物があるとして、建物収去土地明渡請求訴訟を提起していましたが、訴訟係属中に死亡して、A・B・Cが相続しました。この場合、訴訟手続において何が起こる?


訴訟手続が中断します?

何で中断するの?

当事者が死亡により不在になるからです。

当事者不在?でも相続人がいるでしょ?他の理由は考えられない?

中断する理由ですか…。当事者が受継するために…。

死亡による受継って何て言うの?

当然承継です。

うん。特定承継との違いは?

実体法上の権利義務の移転がない点で違います。

特定承継の具体例は言える?

たとえば債権譲渡を受けた者が権利の承継を主張して訴訟に参加します。

その場合って中断する?

いえ。しません。当然に承継されます。

当然に?

いえ、当事者が申し立てること等により承継されます。

じゃあ、相続の場合は?

はい。当然に承継されます。
そうすると、被承継人の手続保障を図るために訴訟を中断させる必要があります。

じゃあ、中断しない場合ってあるの?

はい、訴訟代理人がいる場合には中断しません。

なぜ?

訴訟代理人がいれば、その者が引き続き訴訟を続行できるため、当事者の手続保障が害されないからです。

分かりました。では、次のカードを見てください。建物所有者のAがいるとして、建物を共同で所有しているB・C・Dに建物収去請求訴訟を提起しようとしましたが、訴えは紛争につき争そっていないDを除いてBとCのみになされました。この訴えは適法?

はい適法です。

こういう訴訟を何て言うの?

共同訴訟です。

もっと詳しく。

通常共同訴訟です。

なんでDを除いて訴え提起できるの?

はい。原告に全ての関係者を探して被告とさせる負担を負わせるのは不当だからです。

他に理由は?

建物の共有者はそれぞれ明渡債務を有していると考えられるので、各人に訴え提起すれば足りるからです。

そういう債務を実体法上なんて言うの?

不可分債務です。

まあ、それは実体法上の問題だよね。訴訟法上の問題で他にある?

他にですか…。えっと…。う〜ん…。

Dはさ、争ってないわけでしょ?そんなDに訴えても意味ある?

あ、はい。そうですね。争っていない者をあえて被告としても実益がありません。

はい。では次のカードを見てください。Xが死亡して、その妻Aと、成年の子供B・Cが甲不動産を相続しました。しかし、Cは甲不動産は自己が購入したものと主張しています。登記もCにあります。この場合、AやBとしては、Cの主張を封ずるためにどんな方法が考えられる?

遺産確認の訴えを提起します。

それってどういう訴訟?

はい、甲不動産がXの所有にあったということを…

Xの所有??

いえ、相続人間で相続の対象となる遺産に属することの確認を求める訴えです。

他の方法って考えられる?

共有持分権に基づいて抹消登記手続の請求をします。

この場合は移転登記手続の請求ですね。いま君が言った方法と遺産確認の訴えとの違いは?

はい、遺産確認の訴えは遺産に属することの確認であるのに対し、共有持分権に基づく請求は、自己の共有権に基づく…

う〜ん。共有持分権に基づく請求では遺産であることが前提にあるよね?これって既判力は生ずる?

いえ、理由中の判断であるので既判力は生じません。

違いというのは、そういうことだよね。
じゃあ、この争いに関し、Bが訴訟を起こしたくないとしたので、Aが単独でCに対して訴えを提起しました。この訴え提起は適法?


違法です。

不適法ということだね。こういう訴訟を何て言うの?

必要的共同訴訟です。

もっと詳しく。

固有必要的共同訴訟です。

なんでそう考えるの?

共同相続人間での遺産確認がなされれば、相続問題が抜本的に解決されるため、全ての関係者が訴訟に関わるべきだからです。

でも、Bが訴訟を起こしたくないと言ってるんだから、Aとしては、訴えられないんじゃないの?

その場合はBを被告とすればいいと思います。

Bを被告に?でも固有必要的共同訴訟だから、AとBは共同で訴訟を提起すべきなんでしょう?

えっ…。その場合は。共同被告…。訴訟告知…。

訴訟告知も同様に駄目でしょう。
まあいいでしょう。この場合はそういった問題が生じます。
実は君が最初に偶然、固有必要的共同訴訟って言っちゃったから、ホントはそれを最後に引き出したかったんだけど…(と、このあといくつか判例があることを指摘され)、研究しておいて下さい。
(民法の先生に向かって)何かありますか?
以上で終わりにします、お疲れ様でした。


ありがとうございました。失礼します。

あっ。カードを直しといてくれへんかな。いや、ホントは僕がやらなきゃならないんだけどね。

はい。

失礼します。


2008年10月25日

平成20年度旧司法試験口述試験再現(憲法)

※太字が試験官の質問
※もう少しやり取りがあったと思いますが詳細は思い出せませんでした。
時間は15分弱でした。

失礼します。○組○番です。

はい。それではお座りください。
おはようございます。緊張していますか。


はい。

そうですよね。緊張するのが普通ですよね。
それでは、今日は集会についてお聞きしたいと思います。
集会とはどのようなことを言いますか。


はい。ある主張をするために一定の場所に人々が集まることを言います。

その集会の自由は何条で保障されますか。

21条1項です。

その条項は一般的には何の自由と呼ばれていますか。

表現の自由です。

では、今おっしゃった表現の自由と集会の自由とはどういった関係にありますか。

ある主張という表現をなすに当たって、個々人がただ単に主張をなすだけでは、影響力が小さいので、一定規模に達する人々の集まりにより集会をなして、表現行為を達成するという関係にあると思います。

そうすると、集会の自由は単なる手段に過ぎず、表現の自由を保障すれば足りるということになりますか。

いえ、表現をなすに当たって、集会を催すことによって大きな影響力を与えることができるので、集会の自由は表現の自由の一部として保障されていると思います。

なるほど。そういう考えもありますね。では、本日問題にしたい事例を申し上げます。ある団体が集会をなすに当たって公園の使用許可を得ようと、公園の管理権を有する市に対して使用許可の申出をしました。しかし、市長はその公園の使用によって管理権に重大な支障が生ずるおそれがあることを理由にその申出を却下しました。あなたなら、どのような主張をしますか。

その処分の取消を申し立てます。

そうですか。では、当該市長の処分が条例に基づく処置であったとして、その条例には「管理権に重大な支障が生ずる場合には使用許可の申出を拒むことができる」とありました。この市長の処分には表現の自由に関して問題が生ずることはありますか。

はい。問題が生ずる余地はあると思います。

本事例では許可制が取られていますが、この制度に問題はありませんか。

はい、不許可の要件を厳格に絞ったうえでの処分であれば、実質的には届出制と言えるので問題はないと思います。

いまあなたが不許可の要件を厳格に絞るとおっしゃいましたが、具体的にはどのような要件が考えられますか。

はい。例えば使用団体が集会をなすことで周辺住民の平穏を害するおそれがある場合は不許可とできるというような要件を課すことが考えられます。

そうですか。でも本事例の条文にはそのような要件がない以上、実際の運用によって厳格な要件を課すことが保障されないため、使用団体の集会の自由が大きく害されるかもしれませんね。
では、集会をなすことで、他の人が公園を使用できなくなるおそれがありますが、そのように公園を利用する自由を害してまでも集会の自由を認めるべきですか。


確かに、公園を利用する自由というものも考えられますが、あまりに細かく人権を設定してしまうと、それと同時に人権の制約根拠も増えてしまうので、公園を利用する自由というものを認めて、集会の自由を制約すべきではないと思います。

分かりました。同じようなことが問題となった最高裁判例は何かご存知ですか。

はい。集会の自由の関係ですと、泉佐野市の事件があります。

事例の内容を紹介していただけませんか。

はい。確か、関西国際空港建設の反対運動をすべく団体が市に体育館の使用の許可を求めましたが、その使用を認めず市が不許可処分とした事例です。

それに対して判例は何と言っていますか。

集会をなすに当たって、明らかに差し迫った危険が客観的に予測できる場合に限っては不許可とすることも可能であって、本件の場合にはその危険が予測できるため、市の不許可処分は合憲との判断をくだしました。

いまあなたがおっしゃった「明らかに差し迫った危険」というのは、どのようにして判断すべきなのでしょうか。例えば、私が挙げた事例で、集会をなす団体に反対する団体がいて周辺住民の平穏を害するおそれがあるという理由で、「明らかに差し迫った危険」があるとして使用を不許可にしてもよいのでしょうか。

その反対する団体の暴挙が警察への届出によっても防ぎようがない態様のものであれば、不許可もやむを得ないのではないかと思います。

しかし、例えば市長が不許可をなすに当たっては、いまだその反対する団体は暴挙に出ているわけではないのですから、そのような可能性があるというだけで公園の使用を不許可にしてしまうと、使用団体にとっては不都合ではないですか。

確かに暴挙に出る可能性があるという理由だけ不許可にすることはよくないと思いますが、例えば以前にもその反対する団体が周辺住民の平穏を害するような運動をした等の客観的な事実に基づいて「明らかに差し迫った危険」の有無を判断すれば、大きな不都合はないと思います。

そうですか。どちらにしろ「管理権に重大な支障が生ずるおそれ」という条文の文言のみで市長が不許可とするのは、あまりにも漠然とし過ぎていますよね。
(副査に向かって)何かありますか。
以上です。お疲れ様でした。


ありがとうございました。
失礼します。


2008年10月16日

平成20年度旧司法試験論文試験成績

成績通知書及び口述試験受験票が今日届きました。

憲法 C
民法 A
商法 A
刑法 B
民訴 B
刑訴 B

総合 A
得点 132.52点
順位 126位

でした。
ぎりぎりでしたね。しかも、自己評価と大きく
食い違っている点で危険な臭いがします。

このままの成績だと口述試験が危ないです。
が、論文の成績は関係ないということを肝に銘じて、
最後まで諦めず頑張ってきたいと思います。

2008年10月09日

2008年旧司法試験合格発表

合格していました。

2週間後の口述試験に向けて引き続き頑張っていきます。

口述試験の内容もここでご報告できればと思っています。

2008年09月28日

旧司法試験合格発表を1週間後にひかえて

合格発表が近付いてきました。
論文再現後、このブログを完全に放置していたので、
ここらで少し、自分の答案を振り返ってみたいと思います。

【憲法】
●第1問
・制約されるA自治会会員の人権の設定(19条、29条1項)はよかったが、その人権を設定した理由が薄かった。3(3)でそこを少し厚く書いてはいるが、冒頭で書くべきであった。
・A自治会側の人権としては財産権ではなく、結社の自由を考慮すべきだった。
・構成や論点としては大きく外していないと思う。

●第2問
・89条前段について書くべきだったかどうか、いまだに確信が持てない。でも、問題文にあれだけ宗教絡みの事情が書いてある以上、スルーする勇気はなかった。
・独立行政委員会の論点をあえて書かなかったことは、後悔していないがやはり不安である。軽く触れるべきだったと今になって悔いてきた。2(3)で、独立した職務から監督すべき要請と、乱費防止のコントロールを及ぼすべき要請の対立を上手く考慮している点を評価してほしい。問題に独立行政委員会をもってきた理由はそこにあると信じたい。

【民法】
●第1問
・権利保護要件としての引渡しは全く思いつかなかった。ただ、その代償として、1(2)及び(3)でCを保護する法律構成を一生懸命考えている姿勢は評価してほしい。ただ、(2)は余事記載と見られてしまうと思う。
・2で将来債権譲渡の論点を大展開したことが悪く評価されることはないと思っている。2(2)イでは、468条を思い起こせなかったが、典型的な解除と債権譲渡の論点とは事案が異なるので、痛手ではないと思う。
・大きな論点落としはないと思う。

●第2問
・1はミスが多かった。1(1)は考え方は問題ないと思うが、肝心の法律構成(703条)が抜けてしまったのが悔やまれる。1(2)もAB間の売買契約が錯誤により無効である以上、単純にBに「利得」なしと認定すべきだった。
・2は1と比べればよく書けたと思う。現場では判例が「利得」や「損失」や因果関係ではなく、「法律上の原因」の有無の要件を詳細に検討していることが頭に浮かんだため、このような構成になった。自分の理解が答案に表現し切れていないかもしれない。

【商法】
●第1問
・2で事業譲渡の意義の論点を規範として展開していない点が少し気になるところ。
・ただ、論点としては落とした所がなく、守れたと思っている。

●第2問
・2に関して、問題文見た瞬間に敵対的買収のことが頭に浮かんできてしまったことが一番の敗因。これは明らかな余事記載だった。それを書くなら、有利発行の論点をしっかり書くべきだった。
・「著しく不公正な方法」のあてはめに関しては、問題文の事情をよく使って書き切れたと思う。

【刑法】
●第1問
・丙の罪責について、間接正犯の論点を使ったことが吉と出るか凶と出るか。ここの評価如何で合否に大きく影響が出ると思っている。現場でも、危ないなと思いながら書いていたが、どうしても殺意ある丙について最初から殺人犯を検討したかったので、この構成を採ったことに悔いはない。第1行為と第2行為の一体性を考慮する考え方に思い至る実力はなかった。
・乙の罪責について、中止犯を展開し過ぎた点は若干の後悔があるが、余事記載が減点にならないことを祈る。

●第2問
・論点を余すことなく書けていると思っている。
・甲の横領罪につき親族相盗例を落としたが、むしろ落とした人の方が多いと思うので、ダメージにはならないと思う。

【民訴】
●第1問
・特に問題はないと思っている。悪く評価されることはないだろう。

●第2問
・反対利益にも配慮しつつ、良く書けたのではないか。良く評価してもらい、他の教科のミスを埋めてくれることを願うばかりである。

【刑訴】
●第1問
・3を展開し過ぎた点が失敗。問題文の事情からすれば身体の捜索というより、単なる携行物の差押であった。ただ、適法性を慎重に検討している方向性でのミスなので、適法性を安易に認定してしまうミスよりはマシだったのではないか。大減点はないと信じたい。
・それ以外の論証はよくできたと思っている。

●第2問
・1は問題提起が抽象的に過ぎた点が悔やまれる。
・2及び3に関しては、分析的に検討できたのではないか。

【総合】
・商法の出来が一番悪かった。C評価止まりであってくれれば合格が近づく。
・民訴の出来が一番良かった。上位Aの評価であってくれれば、さらに合格が近づく。
・刑訴はぎりぎりAであってほしい。刑訴がB以下であれば、合格は遠のく。
・民法はみんなあまりできていないと思うので、大きく沈むことはないと思っているし、民法の出来で勝負が決まるとは思っていない。
・憲法と刑法の出来不出来が、自分の中では確定できない。この2教科の評価が合否に大きく関わる。憲法第2問の独立行政委員会の部分の評価及び刑法第1問の丙の罪責の評価がとっても気になる。吉と出ればAだし、凶と出ればD以下でもおかしくない。


あとは静かに合格発表を待つのみです。

2008年07月23日

H20旧司法試験 憲法第1問 再現

1、A自治会による自治会費の増額の決議は、A自治会の会員の自治会費を増額されない自由を侵害し、違憲ないし違法ではないか。
 この点、かかる自由が憲法上保障されているかが問題となるも、特にA自治会の会員の中でも少数派は、多数派により不当な決議がなされ多く自治会費を支払うことにより、財産権(29条1項)や思想・良心の自由(19条)が害されるおそれがあるため、かかる自由は同条により保障されていると考えるべきである。
2(1)もっとも、公権力による人権侵害に対する規律を予定している憲法を直接私人間にも適用して、A自治会の決議の違憲性を論じることはできない。
 しかし、私人間においても本問のように団体内部の多数派が不当な決議をすることで、少数派の人権を侵害することは考えられるため、かかる人権侵害を抑制する必要はある。そこで、私人間においても憲法を間接的に適用して、人権の衝突を調整することはできないか。憲法の間接適用の可否が問題となる。
 (2)思うに、憲法の掲げる価値は全法秩序に妥当するものであるため(第10章参照)、私人間においてもその人権保障の精神は及ぶと解される。ただし、一方の人権の擁護を強調することは、他方の人権の制約にもつながるため、憲法の価値を私人間に直接及ぼすことは人権の相対化にもつながる危険性もあるため妥当でない。
 そこで、憲法の価値を間接的に及ぼすべく、私法の一般条項に憲法の趣旨を取り込んで解釈適用することで、間接的に人権の保障を達成すべきものと解する。
 (3)これを本問において見ると、A自治会は地縁による団体であることからその目的の範囲内において権利を有し義務を負っている(地方自治法260条の2、民法43条類推適用)。そこで、A自治会の決議が目的の範囲内か否かを判断するに当たって、憲法の趣旨を取り込んで目的の範囲を解釈適用することで、間接的に会員の人権を保障してくべきと解する。
3(1)では本問におけるA自治会の決議は目的の範囲内のものと言えるか。その判断基準が問題となる。
 (2)この点、私人間に憲法を間接適用する場合には、人権侵害の主体となっている側も私人であることから、侵害主体側の人権も考慮に入れる必要がある。そして、本問においてはその主体は団体であるが、団体は実社会生活上の構成要素として重要な役割を有していることから、たとえ権利能力が制限されていようとも、法人と同様に権利の性質上可能な限り人権の共有主体性があると考えるべきである。したがって、団体側の人権も考慮に入れる必要がある。
 一方、人権を侵害される私人の側の人権も保障する必要性は高い。そこで、団体の決議がその目的の範囲内であるか否かは、その決議によって達成される団体側の利益と制限される私人の不利益を比較衡量しつつ、決すべきである。そして、その際には制限を受ける人権の程度や、団体の性格をも考慮に入れるべきである。
 (3)これを本問において見ると、A自治会にとっての収入源は会員の出費する会費であるため、それを決議によって徴収することはA自治会の財産権(29条1項)として、その性質上憲法上の保障を受ける権利である。
そして、確かに自治会費が増額されることで、会員は多くの出費を要しその財産権(29条1項)が侵害され得るし、自らが望まない団体への寄付に会費が使用されることで、会費を出費した会員の思想・良心の自由(19条)を害するおそれがある。
 しかし、A自治会が寄付を予定している団体は地域環境の向上と緑化の促進を目的としており、地域住民への利便の提供をなしているA自治会の目的と密接に関連していると言える。また、増額される会費も1000円とそれ程多くはなく、財産権の侵害の程度は少ないと言える。また、A自治会は強制加入の団体ではなく、会員は自由に退会できるのであるから、自己の意思に反する寄付がなされる場合は退会することができ、思想・良心の自由にたいする制約もそれ程大きいものとは言えない。
 したがって、A自治会の決議は目的の範囲内のものと言える。
3、以上より、A自治会の決議が目的の範囲外のものとして違法となることはない。
             以上(3頁と少し)


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