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教育・スポーツ

【がっこう・発】

甲陽学院高校 グリー部

2008年10月28日

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校内の文化祭で息のあったハーモニーを披露するグリー部員ら。3年生にとっては最後のステージとなった=西宮市角石町

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清田怜さん(17)

 東大28人、京大69人……。今年春の入試でも有名大学に多数の合格者を出した私立の男子校、甲陽学院高校(西宮市角石町)。この進学校に高校では全国でも数少ない男声合唱団「グリー部」があると聞いた。学校を訪ねると、声変わりのすんだ男子高校生たちの、重くてやさしいハーモニーが響いていた。
 学校は六甲山系の東、眼下に阪神間の市街地を見下ろす高台にある。天気がいい日は大阪湾や生駒山まで見渡せる。この地に移ったのは30年前。それまでは阪神甲子園球場のすぐ横にあった。
 「昔は名実ともに『甲子園』に一番近い学校だったんです」と石川義明校長が言う。1923年、夏の高校野球の前身、全国中等学校優勝大会で全国制覇。甲子園球場ができる前、まだ鳴尾球場で大会が開かれていたころのことだ。現在の校舎には、今も色あせた優勝旗のレプリカが飾られている。
 「それに匹敵する快挙」と学校で話題になったのが、今年8月、群馬県であった全国高校総合文化祭(総文)に初出場したグリー部だ。
 同校のグリー部は戦後まもなく創部された。長年の県の総文での演奏が認められ、学校単独の男声合唱団でただ1校、全国総文に出場した。28人の部員が重厚な響きで3曲を披露し、「一つ一つの言葉と音を大切にし、感じ、その意味とあり方を考えての演奏だった」と講評された。
 「満足いく合唱ができた。練習の成果が出せた」と、前部長で3年の北山裕一朗さん(18)。「時間は短いけど密度が濃い」と部員たちがいう、その練習をのぞいた。
 「そこでブレス(息継ぎ)したら、あかんて。音楽が死んでしまう」「平常心、失ってるんちゃうか」――。調子の上がらない部員たちに、顧問の杉山恭史教諭(44)が厳しい声をぶつける。
 練習していたのは、中島みゆきの「時代」。「♯まわる〜まわる〜よ、時代はまわる〜」というサビの部分で、杉山教諭はこう注文をつけた。「時代が『まわる』って、普段言うか。作者がこの言葉にどんな思いを込めたか、言葉にもっと感動して歌おうよ」
 部長を務める2年の糸崎豪さん(17)は「合唱は体力も集中力もいるし、思ったよりしんどい。でもうまくハーモニーができた時は、ゾクッとする快感がある。みんな、それを目指している」と言う。
 全国総文から1カ月半後の9月23日、校内で文化祭「音楽と展覧の会」が開かれた。全国総文出場のために引退を半年延ばした3年生部員にとって、最後のステージ。グリー部全員で、全国総文で歌った3曲のほか、3年生が入部後すぐに練習した男声合唱用の組曲4曲を高らかに歌い上げ、大きな拍手を浴びた。
 「人の出す声って、やさしいなあと感じるんですよ」。歌い終えた北山さんにグリーの魅力を尋ねると、笑ってこう答えた。(深松真司)

◆服装・頭髪自由、責任自分で/清田 玲さん(17)
 一番の特徴は自由な校風です。制服はなく私服ですし、携帯電話を持ってくるのも頭髪も自由です。私のように長髪の人もいれば、髪を染めている人もいます。先生に注意されることはありません。
 判断は生徒本人に任されています。生徒を「ひとりの大人」として扱ってくれる学校なのです。でも、それは責任がともなう自由です。結果はすべて自分に返ってくる。その覚悟が生徒に求められているのだと思います。
 中高一貫なので、同級生とは6年間一緒です。同じ大学を目指す人も多く、一生つきあえる友達が見つかるのも大きな財産です。

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