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[前回までのあらすじ] これは、電脳暦(V.C.)の地球圏を舞台にした、巨大人型兵器バーチャロイド(VR)を巡る人々の抗争の物語である。V.C.a2年、レンタリア「T.A.I.」において、DNAとRNAとの間で大規模なVR戦が勃発した。DNAは一大反攻作戦「サンド・サイズ」を発動したものの、RNA側の反攻に押し切られ、戦線は各所で寸断されてしまっていた。サルペンVR連隊もマイダス湖沿岸の一拠点、KNK#04で孤立し、敵の激しい攻撃にさらされていた。 |
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#05 |
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| 三日月 鹿之助 |
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荒廃した滑走路の片隅に、異形の航空機が着陸している。サルペン准尉は落ち着かなかった。一方的な通告のもと、RNA側から捕虜交換の打診があり、こちらの返答を待たずに交換要員を送りつけてきたのだ。 機外に降り立った人物は年の頃20代半ば、東洋系の顔立ちをした禿頭の男で、そのいでたちは着流しだった。兵士に付き添われてこちらに近づいてくる姿を見て、ボイド大尉が眉をひそめる。 |
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| ボルト・ゴッチ |
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「見よ!」 |
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| 撤退決議 |
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「で、ヤツはなんと?」 |
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| 密談 |
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「90秒限定で512Tバイトだって?」プロンガーは呻いた。「そいつは、高すぎる。今回の契約でこちらが受け取ることになっている金額の半分が消し飛んでしまう。」 |
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[次回予告] ! #06「黒衣の救済者」 |
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| 主要登場人物 |
●ミミー・サルペン准尉
S.H.B.V.D.に所属する若き女性士官で、典型的優等生型エリート・パイロット。サンド・サイズ作戦に際して、集成VR連隊の指揮を委ねられる。
»PILOTS
●ダッシュ・プロンガー曹長
S.H.B.V.D.に所属する下士官。あらゆる局面で冷静沈着、的確な状況判断に基づいて行動する、頼れる仕事人[ナイスガイ]。»PILOTS
●ステフォン・アイボリー軍曹
若干16歳、S.H.B.V.D.では最年少の軍曹。華奢な体に白磁の肌を持つ美少年だが、パイロットとしての腕は確かである。»PILOTS
| 登場機体 |
●YZR-540 SH バイパー540 SH
第6プラント「サッチェル・マウス」の開発主任をつとめるアイザーマン博士は、第一世代型VRであるバイパー系列をテストベッドとして数種の新機体の開発を行っていた。その目的は、遠隔地からの迅速な戦線投入が可能なVRを実用化することである。彼はこの目的を達成するため、VRに航空機への変型機構を導入することを検討した。これは、当時としては画期的な試みだった。
YZR-540 SHは、博士が手がけた一連の機体の中では初期の部類に入り、機体の変型機構は未だ試行錯誤の段階に留まっている。本機は、出撃時には飛行ユニットを装着した形態(図1/2:プロト・スラッシャー形態)で運用される。しかし、対VR戦闘時は飛行ユニットが廃棄され、通常のVR形態へと移行する(図3/4:バーチャロイド形態)。つまり、一度VR形態へ移行すると、飛行形態に戻ることはできず、おのずと運用上の限界を生み出していた。このため、個々の形態時の能力は水準以上だったにもかかわらず、本機が制式に採用されることは見送られてしまった。
アイザーマン博士は、YZR-540 SH以降も、変型機構を内蔵するVRの開発に意欲的に取り組んでいった。第8プラント「フレッシュ・リフォー」によるVR開発禁止令の布告下、一時期計画は頓挫を強いられたものの、彼の試みは、後にRVR-42サイファーとして結実することになる。
»YZR-540 SH