伊藤みどり
「プレミアA」に伊藤みどりが出ていて,無性に彼女の動画が見たくなり,YouTubeやニコニコを巡っているうち,こりゃあすごい本当に100年に1度の選手だと再び感動したのである。理屈っぽくなってからの今のフィギュアスケートをよく知りませんのでいつものように懐古厨でする。動画貼りすぎ,重くてすみません。
【伊藤みどりの不思議その1】
日本の放送局による映像で彼女の演技を見ていた当時のことを思い返すと,なんとなくいつも不安だったように思う。なんか「固唾をのむ」感じで楽しめなかったような気がするのである。ところが20年後の今,海外の中継動画を見るとこれが一変。まったく伸び伸びとすばらしく自由に舞っている彼女を堪能できる。
【伊藤みどりの不思議その2】
最近テレビで見る伊藤みどりの顔がおかしい。はじめはネタ,冗談で言っているように聞こえた「私はブスなので」という発言,ひょっとすると本人はほんとにそう思ってるんじゃないだろうか。こんなに天真爛漫でかわいかった女性がどんどん暗い感じ,何かを背負った感じになってしまったのがとってもかわいそうだ。
【伊藤みどりの不思議その3】
普段テレビに出ている彼女を見る限り,お世辞にも音楽は得意でなさそう,いやむしろ,たとえ音痴だったりしても驚けないくらいなのだが,氷上のみどりはとんでもないくらい音楽を掴むのが巧い。掴むというより「操る」という表現の方が適切だ。
【伊藤みどりの不思議その4】
コンパルが苦手だ,とかアーティスティック・インプレッションが…,などとわかったように言われていたが,よくよく考えてみるとコンパルがなくなり,そしてプレゼンテーションのも評価されるようになってから,みどりらしさが消えてしまった。中学生の頃だって,17歳のときの演技だって,彼女の舞はいつだってアーティスティクだったように思う。駄目だ駄目だと言われ改善したからよくなっただけでなく,世界が彼女の持つプレゼンテーション能力を評価するようになったのならば,もっともっと周りはあの,楽しそうに滑っていた頃の伊藤みどりを評価しておくべきだったんじゃないか,そしたらもっともっと彼女は突き抜けたところまで到達していたのんじゃないか,と思っちゃったりもするのである。17歳の頃とアルベールビル,前者の方がスポーツとして感動してしまうのは私だけだろうか。
【伊藤みどりの不思議その5】
要するに,「伊藤みどり自身が自分のすごさを過小評価していたりしないか」と不安になってしまったのである。彼女の演技は今見ても自然に涙が出る。感動しているとか歳を取って涙腺が弱くなってきたとかでなく,なんか,本当にすごいものを見たとき自ずと流れる涙のようにも思う。それなのに,ひょっとすると伊藤みどりは,もっとちっぽけな存在だと自分のことを思っているんじゃないか。日本人が彼女をそう育ててしまったのではないか。もしそうなら本当にさみしい。荒川静香のしたたかさみたいなものを身につけてほしかった。そう悔やんでしまうのである(浅田真央のことはよく知らないのだが,この前の世界フィギュアで転倒した直後の所作と,伊藤みどりの数々の転倒シーンを較べると,まったくみどりは真摯であって心の底から応援したくさせる何かを持っているなあ,と)。
6位:1988年世界選手権SP
「フリーの伊藤みどり」とか言われていたが,ショートの方がみどりらしさのわかるプログラムが多いようにも思う。ショートの思い切った選曲の方が(フリーはベートーヴェン「皇帝」から始まるプログラムがよかったがちょうど調子を落としていた時期だったのがつらい。86年の世界選手権もいい)。
5位:1993年世界プロ選手権
91,92年の動画はつらくて見られない。ああ引退してよかったな,と思えるこれがいい。
4位:1988年カルガリー五輪FS
この4年前にはサラエボでオリンピックが行われていたんですよ。信じられませんね。はじめて覚えたウィンター・スポーツの選手はジャンプの秋元だったか黒岩彰だったか。みどりのオリンピックの中で一番すばらしいのはコレだと思う。
3位:1987年世界選手権SP
屈託なかった頃のみどりのよさが全面に出ている。中盤から終盤にかけての追い込みとリズム感がとにかくすごい。何にも制約されていないかのようなこの頃の演技は好きだ。これが1位でもいいくらい。
2位:1989年世界選手権FS
言わずとしれた世界選手権史上女子初のトリプルアクセル。だけでなく6種類の3回転。フランク・ミルズの音楽がまた何とも壮大で。
1位:1990年世界選手権SP
伊藤みどりのすべてが詰まった演技。みどりが音楽に合わせているのではなく音楽の方がみどりに合わせているかのような。もう本当に楽しくなるプログラムで,アスリートなだけでなく彼女はアーティストでもあるのだな,と。フリーも入れたかったけど,ミスなくみどりもうれしそうなショートの方が嬉しくなれる。楽しくなる,嬉しくなる方が彼女に相応しい。1990年が伊藤みどりの頂点だ。
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