政局2008
経済激変で解散先送りに
【経済】破たん論噴出 米ビッグ3経営危機2008年11月15日 朝刊 【ニューヨーク=阿部伸哉】経営が行き詰まっている米自動車業界について、「破たん」の選択肢が現実的に議論され始めた。ゼネラル・モーターズ(GM)などビッグスリー(大手三社)の一社でも破たんすれば、関連企業など含め数百万人規模の雇用に影響が出るとされるが、米メディアでは「公的支援でも再生は無理」「一から出直しを」との意見も多く、議論の行方が注目される。 「破たんという言葉がおどろおどろしいだけ。単なる手続きだ」。著名投資家のウィリアム・アックマン氏は十一日、米テレビ局で発言。「政府資金は失業者の再雇用訓練に使ったほうがいい」と述べた。十三日付ニューヨーク・タイムズ紙も一面で「破たんはそんなに悪い?」との見出しで、米連邦破産法一一条(日本の民事再生法に相当)申請の可能性を分析した記事を掲載した。 ビッグスリーはいずれも運転資金不足に苦しみ、特に最大手GMは外部支援がなければ、年内中に給与や取引先への支払いが滞り、経営危機に直面する可能性が高い。 だが、メディアに紹介された破たんの利点をまとめると、新会社で債務を圧縮でき、経営が身軽になるほか、労働組合との医療保険などの協約見直しなどで大幅なコスト削減が期待できる。究極の“ショック療法”だが、長期的には経営改善の近道だとの主張だ。 来週から米議会で自動車業界への二百五十億ドル(約二兆五千億円)規模の緊急救済案を討議されるが、ここでも共和党を中心に「競争力回復の見込みがないままの公金投入は不健全」と反対意見が根強く、可決の見通しは立っていない。 破たん後に再生した例は米航空業界で多いが、問題は自動車業界を同列で論じられるかどうか。米市場調査会社によると、消費者の八割は「破たんしたメーカーの車は買わない」と回答。市場から締め出されることになり、再建は困難を極める。 また、現在の経済・雇用情勢を考えれば、大量失業を伴う破たんは最悪のタイミング。世界の株価に与える影響も計り知れず、「単なる延命措置」にも意義を認める専門家は多い。
|