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黒川文雄のサブカル黙示録:リバイバルブームの功罪 「停滞」という名の満足感

 このところのメディアの変化、進化に関しては目を見張るものがあります。PS3でリリースされた「メタルギアソリッド4」は、ビジュアルの圧倒的な美麗さ、「映像」を中心に考えた小島秀夫監督のこだわりが結集した作品です。ゲームの動作そのもののストレスの少なさは従来のそれとは格段の進歩を遂げたと言ってもいいでしょう。そのPS3と言えば避けて通れないのがブルーレイディスクの機能です。ゲームの市場もかつてのPSやPS2のようなマーケットのにぎわい感が減速しているように、映像ソフトにおけるブルーレイも、年末需要を控えた今でも加速すらする見込みは薄いと思われます。要因のひとつは購買ユーザー側の満腹感なのではないかと思います。さてその満腹感とは何でしょうか?

 日本映像ソフト協会の資料によれば毎月約1500~2000作品のDVDソフトがリリースされています。年間を通じて約2万4000タイトルがリリースされているということです。その中には「インディジョーンズ」のような大作から「グラビアアイドル」ものまで多様な作品があります。タイトル数だけでも十分な満腹感です。または、DVDを買ったにもかかわらず視聴しないまま、もしくは視聴する時間を持てないままほこりをかぶっているようなソフトを保有していませんか? いつか見ようというアレです……。これを繰り返すとコレクションという名前の在庫がうず高く積まれてゆくことになり、気がつくと街の中古ソフト買取店の自動ドアを開けることになります。特に社会人になり、可処分所得が増えたために、昔はレンタルやダビングで済ませていたものを購入しようという意欲が増してきて、その結果ソフトは増えるが、労働時間は反比例して増えているためエンターテインメントライフの“デフレスパイラル”が起こっているのではないかと考えられます。

 さて、その満腹感のひとつの要因はリバイバルではないでしょうか。あれ?これってどこかで見たことがある、聴いたことがあるというものです。辛らつなことを言えば、新しいものが生まれないという状況を端的に表しているのがリバイバルという満腹感の側面ではないでしょうか。

 分かりやすい例では「ヤッターマン」(77年放送~)がリメークされてテレビアニメ化が先行し、来年は劇場映画版が公開されます。玩具などの展開も含めて大掛かりなメディアミックスをしているようです。また、80年代を中心とした名作アニメのDVDメモリアルボックスの再発売ラッシュも活性化しています。一見、独自コンテンツのように見えても、原作を強く意識した作品もあります。「超時空要塞マクロス」(82年放送~)の25周年記念として登場したアニメ「マクロスF」はその典型と言えるでしょう。

 アニメだけではありません。「少年ジャンプ」黄金時代の一翼を担ってきたマンガの再燃現象も顕著です。「キャプテン翼」(81年連載開始)が復活して「週刊ヤングジャンプ」で連載されたこと。「聖闘士星矢」(85年連載開始)の展開も同じで、「北斗の拳」は言うに及ばず。週刊少年ジャンプ40周年記念と銘打って、6月には「キン肉マン」がページを飾りました。

 ゲームソフトを見ても、ファミコンでヒットした「ドラゴンクエスト4」と「ファイナルファンタジー3」がいずれもニンテンドーDSでリバイバルされ、あまたの新作ゲームをけ散らし、100万本を出荷しました。DSでは、ファミコンゲームが復活する、というのは当たり前と言える状況になっているようです。

 その他にも、「機動戦士ガンダム」関連では、パチスロ機の登場、「カードダス」の復刻、アーケードゲーム「戦場の絆(きずな)」など枚挙に暇がありません。3月には「ねりたんアニメプロジェクトin大泉」として、「銀河鉄道999」アニメ発祥の地として練馬区西武鉄道大泉学園駅名誉駅長に強化プラスチック製の「車掌」さんが就任(設置)しました。EXILEとVERBAL(m-flo)が、銀河鉄道999の主題歌「銀河鉄道999 (THE GALAXY EXPRESS 999)」をカバーしビール会社のCF曲に使われたことは記憶に新しいと思います。 海外でも「スピードレーサー」(マッハGO!GO!GO!) の実写映画公開もその一例と言えるでしょう。

 当時を知るものたちにとっては懐かしいものばかりです。また、当時を知らない世代にとっても新鮮なものとして受け入れてもらえることでしょう。スポーツモノに関して言えば、小学生だった子供たちが影響を受けてプロ選手になったというケースも聞いたことがあります。これらは、すべて、当時、熱中した世代が社会の中心層になってきたということの表れで、コンテンツのリメークはもちろんのこと、コマーシャルソフトのモチーフや楽曲が使用されるようになったのも、当時影響を受けた世代が、クリエーター層の中心になってきたと言うことの表れではないでしょうか。

 これらの感覚がある種の満腹感を醸成しているのではないでしょうか。コンテンツに関して言えば、25年程度の周期をもってリバイバルするという風説があります。ここで述べたものが厳密に25年周期とは言いませんが、近い周期でリバイバルしているのではないでしょうか。それは、一方では、あらゆるメディア、ソフト、ハード、ツールに溢れてしまった今を体現する「疲れ」「閉塞感」「停滞」という「満腹感」ではないかと思います。

くろかわ・ふみお=1960年、東京都生まれ。84年アポロン音楽工業(バンダイミュージック)入社。ギャガコミュニケーションズ、セガエンタープライゼス(現セガ)、デジキューブを経て、03年にデックスエンタテインメントを設立、社長に就任した。08年5月に退任。現在はブシロード副社長。音楽、映画、ゲーム業界などの表と裏を知りつくす。

2008年11月15日

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