東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

大麻汚染 罪の意識が乏しすぎる

2008年11月15日

 スポーツ界や芸能界に限らず、大学生など一般社会の若者の間でも大麻事件が相次ぐ。大麻を栽培したり、譲り渡すのは犯罪だ。罪の意識が乏しすぎる。広がる汚染を食い止めなくてはならない。

 大麻取締法は、大麻をみだりに所持したり、売買したら五年以下の懲役と規定している。営利目的での栽培や輸入の場合はさらに重く、十年以下の懲役だ。これをみても違反が重い犯罪とされていることが分かる。

 大相撲の外国人力士や俳優のスキャンダルもあったが、最近は大学生による事件が目立つ。慶応大、関西大、法政大、同志社大の学生が摘発され、昨年は関東学院大ラグビー部での事件があった。

 摘発件数は増加傾向にあり、昨年の検挙件数は三千二百八十二件と過去最多だった。今年上半期は約千七百件といい、昨年を上回るペースだ。大麻汚染は若者を中心に急速に拡大しているようだ。

 背景には、まずインターネットの普及がある。種子がネット上で販売されており、容易に入手できるようになった。種子から栽培する方法の紹介本も出ている。

 法規制の“穴”もある。大麻取締法は種子の所持と大麻使用自体について処罰する規定がない。種子は香辛料や小鳥の餌に使われており、使用は受動吸引のおそれのある生産農家への配慮からだ。

 大麻取締法は施行から六十年たつ。汚染拡大の現況をみると、種子の扱いや使用について法の規定を見直す時期かもしれない。

 注射器で打つケースが多い覚せい剤などと異なり、たばこのように吸引する形態も汚染が広がる要因のようだ。健康には影響を与えないと思っている若者もいる。

 だが、大麻は身体や精神に深刻な影響を与える。財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は「免疫力の低下や白血球の減少のほか、異常行動や思考力低下などを引き起こし、社会生活ができなくなる場合もある」と警告する。

 大麻をきっかけに、より依存性の強い薬物に手を出すことになりかねない。厚生労働省麻薬Gメンが覚せい剤を扱っていたイラン人グループを摘発したが、密売現場は東京都港区の閑静な住宅街の路上だった。

 違法薬物は身近なところにまで進出してきている。

 文部科学省は大学生向け啓発パンフレット作成を検討し、大学も講習会開催などに動きだした。若者に大麻の違法性と危険性をあらためて訴えていくしかない。

 

この記事を印刷する