自民党と政府の両税制調査会が2009年度税制改正で討議を再開した。金融危機が日本経済を揺さぶっており、まずは税制面で景気を支える仕組みを整えるのが急務だ。経済の活力向上や社会保障制度の安定を視野に入れた中期の税制改革についても輪郭を明確にしてほしい。
税調は来年度改正の議論を7月に始めた。09年度には基礎年金の財源に国税をあてる割合を2分の1に引き上げる。安定財源の確保が必要で、消費税率引き上げも検討課題だった。ところが福田康夫前首相が辞任し、作業が中断した。
この間に世界経済は金融危機で一変した。米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻、銀行間市場のマヒ、中小国からの資金逃避といった金融バブルの崩壊が次々と起きた。日米欧は同時に景気後退の局面に入った。税制も緊急対応を迫られる。
麻生内閣は追加経済対策で来年度改正の「目玉」を先行して決めた。住宅ローン減税の税額控除可能額を最大600万円程度に広げる。証券税制は上場株式の譲渡益や配当に適用する10%の軽減税率を3年延長する。新エネルギーや省エネ関連の設備投資で全額即時償却を認める。
景気が急に冷え込む中では、的を絞って政策減税を機動的に実施することも必要だ。経済効果が高く、使い勝手の良い制度に仕上げることを心がけてほしい。
短期で景気を支える応急策だけでなく、日本経済の活力を高める税制改革も急がれる。日本企業の競争力を維持するには、欧州やアジア近隣国が軒並み実施している法人税率の引き下げが必要になる。証券税制も幅広い金融商品の間で損益通算ができる金融所得一体課税など、個人金融資産の有効活用を促す抜本的な改革への道筋をつけてもらいたい。
揮発油税や自動車重量税の収入をすべて道路にあてる道路特定財源は廃止し、09年度から一般財源にする。だが上乗せの暫定税率を含めた税率をどうするかや、環境対策に財源をどう振り向けるかは方向性が決まっていない。税財源を有効に使う観点で改革を具体化してほしい。
政府・与党は年末に2010年代前半の税制の姿を「中期プログラム」として示す。麻生太郎首相は早ければ2年後に消費税率引き上げ法案を国会に提出する考えを表明した。
行革の徹底や経済動向の見極めは当然だが、社会保障支出の拡大を考えれば、消費税の将来像を明確に示す時期にきている。日本経済の今後を大局的に考えて税制を設計してこそ、税調の存在意義がある。