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社説2 大麻を断ち切る法と規範を(11/15)

 大麻事件が続発している。有名大学の学生や歯科医師などが相次いで検挙され、汚染は高校生にまで及んできた。抜け穴が多い大麻取締法の見直しを含め、大麻を断つ手立てを真剣に考えなければならない。

 警察庁のまとめでは、今年上半期(1―6月)に全国の警察が摘発した大麻事件は1686件で過去最悪の水準となった。しかしこれとて氷山の一角にすぎないだろう。

 慶応大の学生が逮捕されたケースではキャンパスが売買の舞台になっていた。東京都渋谷区の歯科医院では患者の女性が歯科医師に吸引を勧められ、院内で一緒に吸っていたという。大麻が市民社会をむしばみつつあるといっても過言ではない。

 背景には、まず「大麻ぐらいなら」という安易な考えの横行がある。たしかにオランダなどでは規制が緩いが、これは大麻がはびこるなかで、より有害なコカインなどハードドラッグを封じようとやむなく限定使用を認めた策だ。決して「晴れて合法」ではないと知るべきである。

 法の不備も見逃せない。アサを取り扱う農家などで大麻成分を受動的に吸引する可能性があることから、大麻取締法は所持は禁じていても使用については規定がない。また大麻の種子を購入して栽培する手口が増えているのに、種子の所持そのものは規制していない。こうした抜け穴を早急にふさぐ必要がある。

 警察などによる取り締まりの徹底や、税関での摘発強化など課題はまだまだある。しかし何より欠かせないのは、大麻を容赦しないという社会的な規範意識を高めることだろう。教育現場で正しい知識を教え込むとともに、家庭や地域でもこの問題の深刻さを語り合いたいものだ。

 大麻汚染の広がりをこのまま許せば、次はより有害な薬物への移行を招きかねないのが怖い。多くの密売人は同時に覚せい剤なども手がけているし、いったん大麻を覚えれば違法薬物への抵抗感が薄れ、さらに強い刺激を求めがちだからだ。

 大麻自体の危険性もさることながら、それはハードドラッグへの入り口にもなりうる。このことを肝に銘じておきたい。大麻汚染に歯止めをかけることは薬物乱用に対する重要な防波堤ともなるはずだ。

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