まるでバーゲンセールを行うスーパーの社長のような口調で麻生首相が打ち出した追加経済対策だが、その後商品設計の欠陥、誇大宣伝、果ては消費者軽視の利権誘導などが見えてきた。経済危機対策が緊急に必要にもかかわらず、迷走しだした。
「定額給付金」がGDP拡大につながる可能性は、99年の地域振興券よりも低いと見られている。「住宅ローン減税」は主に高額所得者優遇による住宅産業への支援策である。「中小企業資金繰り支援策」は、多くが苦境に陥った地銀の不良債権を国に振り替えることになる。「高速料金の大幅引き下げ」には、ETC利権の拡大を図りたい官僚の意図が透けて見える。3年後の消費税引き上げへの言及の背後には、財務省の意図がうかがえる。
不況対策としての財政出動は、変動相場制の下では効果がないというマンデル・フレミング理論をまつまでもなく、この国の経済回復への貢献は少ない。その結果、世界に冠たる借金国家がある。非効率な業界を支援することでは、内需産業はますます競争力を喪失し、イノベーションも誘発しない。
年金、医療、食の安全、少子高齢化、格差社会、財政危機といったわが国の深刻な社会問題は、政府の制度設計の失敗によるが、そこにも全く踏み込んでいない。短期的な効果も期待できず、長期的にも逆効果である。
「官僚を使いこなす」と豪語した麻生首相は、結局「官僚に使いこなされて」しまっている。海の向こうの同盟国は、チェンジをうたうオバマ氏が大統領になる。官僚内閣制によって劣化したこの国の仕組みも、今やチェンジが必要だろう。(四知)