世界的な金融危機への対応を話し合う金融サミットが、危機の震源地・米国の首都ワシントンで開かれる。日米欧のほか新興国の中国、インド、ブラジルなど二十カ国・地域(G20)の首脳が参加する。
金融対策を目的に、これだけの国々の首脳が集まるのは異例だ。金融危機の影響が実体経済に広がり、世界的な不況が懸念されている。国際通貨基金(IMF)は二〇〇九年に主要先進国がマイナス成長になると予測し、世界銀行も〇九年の世界全体の成長率予測を六月より大幅に下方修正した。
十月の先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で合意した行動計画に沿い、主要国は公的資金による金融機関への資本注入や市場への資金供給、景気刺激策などを実行してきた。サミットでは新興国を含め各国の政策を総点検した上で一段の対策を話し合う。既に中国が四兆元(約五十七兆円)に上る景気対策を打ち出している。日本もIMFの新興・中小国向け金融支援を促進するため、外貨準備から十兆円程度をめどに資金提供することを麻生太郎首相が表明する見通しである。
新興国はIMFなどでの発言権を経済の実力に見合った姿に改めるよう迫る構えといわれる。だが、サミットで米欧と新興国の対立が際立つようでは逆効果になる。各国の結束と一層の対策を市場にアピールしなければならない。
金融危機の再発防止策も重要なテーマだ。金融工学を駆使した証券化商品などで世界にリスクがまき散らされた今回の危機は米国流金融資本主義の破たんといわれ、新たな国際金融秩序の構築が求められている。今回のサミットが、その第一歩となることを期待したい。
具体的には金融機関の監督・規制の在り方などが話し合われる見通しだが、まずは何が悪かったのか、慎重に見極める姿勢が肝要だろう。
金融混乱の根底的な要因として各国中央銀行の金融政策も検証してみるべきではないか。過去の不況期に中央銀行がとった低金利政策により市場に資金があふれ、バブルとなり、今回それがはじけたとはいえまいか。借金の壁が低くなり、例えば超低金利の日本で調達した資金を海外で運用する円キャリー取引が最近まで盛んに行われていた。
金融政策の独立性はもちろん大切だが、異例の首脳会合である。物価の安定を主眼にしてきた中央銀行の役割まで含め、幅広く議論してよいのではないか。要因をきちんと洗い出すことが再発防止につながる。
東京都渋谷区の住宅街で、突然大きな爆発音とともに火災が発生した。火元となった会社経営の男性の住宅兼事務所が全焼し、焼け跡から妻と母親の遺体が発見された。男性と息子ら三人も重軽傷を負った。
男性は映画撮影などで使う火薬を扱っており、銃の発射シーンの「ガンエフェクト」という特殊効果の分野では知られた存在だ。「火薬を調合中に爆発した」とも「火薬を作業中に室内がくすぶり、消そうと立ち上がると爆発した」とも語ったとされる。調合ミスによる爆発か、他の原因で火が出て火薬に燃え移ったのか。
男性が扱っていたのは火薬類取締法で定められた「玩具用火薬」に当たる。一定量を超える火薬の保管や製造には都知事の許可が必要だが、男性も会社も得ていなかった。警察は同法違反の疑いも視野に火薬の取り扱い状況などを調べている。徹底した解明が求められる。
一帯は住宅やファッションビルなどが並ぶ一角で、近くには高校や幼稚園もある。何度も響く爆発音。炎が隣家に次々及んでいく。思いもしなかった爆発火災に、住民たちの衝撃はさぞ大きいことだろう。
それにしても、都心の住宅密集地で爆発するほどの火薬を保管し、扱っていたとは。ひとつ事が起これば、大惨事になりかねないという危機意識はなかったのだろうか。火薬に関する知識や優れた取り扱い技術も持つ超一流のプロにしては、非常識でお粗末な限りだ。過信があったといわざるを得ない。
火薬の調合の有無や保管量などが捜査の焦点だが、現実に爆発火災は起きた。仮に届け出の必要がない保管量だったとすれば基準の見直しが必要だ。危険物を扱う側の意識を含め管理の在り方が問われる。
(2008年11月14日掲載)