14日付中国青年報によると、メラミン混入で乳業メーカーが生産地での検査を強化したことなどで、検査員への暴力事件が発生している。原因には、乳業メーカーへの納品を取り仕切る「ミルク覇王」と呼ばれる、地元のボス的な存在であるブローカーの反発があるという。
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大手乳業メーカーの蒙牛乳業は、メラミン事件を機に、生産地での検査員を各支社から派遣する方式に切り替えた。癒着(ゆちゃく)防止を徹底するために、各検査員の1地域での担当は3カ月の交代制とした。
同乳業唐山検査所では、同社の内モンゴル・オラーンホト(烏蘭浩特)支社から着任した検査員2人が11月2日に検査業務を引き継いだ。5日になり、運び込まれた原乳に異物があるとして、約2トンの受け取りを拒否。検査では計測機器を使った30種あまりのチェック項目があるが、色、油脂やごみの有無などの視覚検査も重視されるという。
2人が夕方になり勤務を終え検査所から出たところ、乗用車で乗りつけた5人に襲われた。5人は棍棒を手にして、「思い知らせてやる」などと叫びながら、殴ったり蹴ったりした。検査員のうちひとりは頭部を殴られ、かなり長い時間意識を失った。もうひとりは、ろっ骨にひびが入る大けがを負った。
警察は傷害事件として捜査しているが、ふたりは着任したばかりで襲撃した5人の顔を知らず、目撃者もいないので容疑者の割り出しは難航しているという。
蒙牛乳業唐山支社によると、検査員襲撃は6月にもあったが、メラミン混入事件で検査を厳格化してからは、10月上旬と今回の11月5日と、2カ月連続で発生した。襲撃後に電子メールや電話で、「あの検査員には、用心させておけ」などとする脅迫もあった。
中国青年報によると、乳業メーカーの検査員襲撃の背景には、「ミルク覇王」と呼ばれる各地のボス的な存在があるという。各企業は地域の酪農農家と一括して契約を結ぶために、地元有力者の力を借りざるをえなかった。「ミルク覇王」は、実際には農家から牛乳を安く買い取り、企業に高く売ることで、ブローカーとして大きな利益を得るようになった。
また、「ミルク覇王」は資金繰りに困った農家に金を貸すことでも、地域の支配力を強めている。農家からいったん買い取った原乳が企業側に「不合格」と判定されれば、「ミルク覇王」には大きな損失となるため、原乳に異物を混入することも厭わないという。
蒙牛乳業唐山支社によると、9月14日にメラミンが混入した粉ミルクの問題が発覚してから、不合格として受け取りを拒否する原乳の割合は、やや減少した。検査を厳格化したため、拒否されるとわかる原乳の持ち込みが減ったためとみられるが、同支社責任者は、「当社の要求が、一部の人への利益に影響しているため、報復としての襲撃事件が発生している」と述べた。(編集担当:如月隼人)
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