余録

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余録:救急情報システム

 人の一生を記録するエンマ大王の王宮にも火事があるらしい。星占いで寿命18とされた平安時代の性信(しょうしん)親王が仏法を修めたところ、ある人が寿命を記した札のあるエンマ王宮の火事の夢を見た。札の「十八」の間が「レ」形にこげ、親王は80歳まで生きた(古事談)▲さて人の寿命は、この世でないどこかにかかっている札に記されているのだろうか。それは焼けたり、汚れたりして、書き換えられることもあるのだろうか。札を記す神様(?)は人の寿命を決めるルーレットでも持っているのだろうか▲そんな空想が頭の中でふくらむのも、救急搬送が遅れる中で亡くなる重症患者のニュースが絶えないからだ。ついきのうは、2月に福島県郡山市で5病院から合計9回も受け入れを断られた82歳の女性が亡くなっていたことが明るみに出た▲昨年の東京都の死亡例では医療機関への照会回数が33回、搬送先到着まで2時間56分かかったケースがあったという。また搬送後に患者さんが回復した場合も含めれば照会回数50回、搬送時間4時間49分という気の遠くなるような例もある▲運が良ければ受け入れ機関もすんなり見つかろうが、だめな時はこの有り様だ。すべてはどこかで回される運命のルーレット次第だろうか。--さすがに東京都は都内の全救急医療機関の医師の現況や、受け入れの可否を検索できる新たな情報システムを来年度にも導入するという▲いくら深刻な医師不足でも、人が上手に情報をやりとりさえすれば、運任せの病院探しは今よりも減らすことができよう。人の寿命はルーレット任せではなく、神様がじっくりと考えたうえで記してもらいたい。

毎日新聞 2008年11月15日 0時06分

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