建国60周年を記念する韓国社会学会の特別シンポジウムが、朝鮮日報社の後援で16日開催された。同学会の洪斗承（ホン・ドゥスン）会長（ソウル大教授）はあいさつで、「建国以後の巨大な変化を整理し、これを基盤として未来の変化に備える努力が、切に求められている」と述べ、企画の意図を明らかにした。「韓国社会：昨日、今日、明日」というテーマで開かれたこの日のシンポジウムは、第1部で技術社会と情報技術（IT）など巨視的な社会変動を扱い、第2部では人口、職業、教育分野の変化を取り上げた。韓国社会学会は今年7月と10月にも第2回、第3回のシンポジウムを開催し、家族・都市・環境・宗教などさまざまな分野における建国60周年を整理する予定だ。

◆成長社会から成熟社会へ

　ソウル大の李在烈（イ・ジェヨル）教授は、「成長社会から成熟社会へ」というテーマの一文で、「過去60年間で最も注目すべき成果は、産業化と民主化だ」と評価した。李教授は「韓国国民一人当たりの国民所得が100ドル（現在のレートで約1万円）だった新生大韓民国が、国民所得2万ドル台（約208万円）という先進国のレベルに近付きつつある。これに要した時間はたった50年。先行している諸国が数百年かけて辿った道だった。政治的にも第一級の自由国家となり、韓国が先進国となることに国際社会から異論はない」と語った。

　とはいうものの、李教授は続けて「一個人を評価するとき、財産や権力の他に“品格”も重要であるのと同じく、一国家にも経済成長や民主化だけでは捉えがたい“品格”がある。韓国は、透明性・信頼・遵法精神・福祉財政・公害などといった社会的水準の質が、先進国に比べるとまだ遅れている」とも指摘した。

　李教授は「建国60年を迎え新たな60年を準備する時点での大韓民国の目標は、先進国入り。先進化の核心は“成熟した社会”を作り出すことで、成熟社会は“社会の質”が高い社会」と語り、そのためには「韓国社会の透明性・安全性・包容性などをアップグレードし、市場と分配、理想主義と現実主義、大企業と中小企業、未来世代と現世代、人間と自然、男性と女性などの対立要素が躍動的に均衡を保つ社会にならなければならない」と提案した。

◆教育立国から教育富国へ

　慶北大の金奎原（キム・ギュウォン）教授は、「教育立国から教育富国へ」と題した発表文で、「建国と共に、教育を通じ国家のアイデンティティーを確保することが重要となったため、教育立国の価値が強調された。目覚しい経済成長は、韓国国民の高い教育率に支えられた部分が大きい」と強調した。教授は、「韓国国民の平均教育年数は、1970年代にあっては小学校5年生の水準だったが、2005年には高校2年の水準にまで上昇した。韓国社会は既に、25歳以上の国民に占める大卒以上の割合が30％を超える高学歴社会となった」と規定した。

　その一方で金教授は、「小学校の教員一人当たりの児童数が1945年の69.2人から2007年には22.9人にまで減り、中学校や高校でも良好な状況を示している反面、大学は教員一人当たりの学生数が55年の32.5人から07年には40.1人にまで増えており、こちらの状況はむしろ悪化している」と指摘。大学教育の質的低下を憂慮した。

　また、「低学歴・貧教育国家から高学歴・過教育国家へと移り変わる過程で、さまざまな副作用も現れている。基礎学問の危機、高学歴者の失業、過度の教育費負担など、教育が幸せを意味するというより苦痛を抱かせているというのが、韓国の現実に近い」と語り、「教育富国のためには、デジタル革命に合う教育体制を構築し、誰でも、いつでも、どこでも学ぶことの楽しさを見出す雰囲気が広がらなければならない」と主張した。

ホン・ヨンリム記者