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【コラム】「中進国のワナ」と「赤の女王効果」(上)

 アフリカの草原に住むチータは、陸上動物の中で最速の動物だ。しかし、チータが主に狩りの対象とするカモシカも足が速く、食事にありつくのは容易ではない。チータが飢え死にしないため、より速く走れるよう少しずつ進化してきたように、カモシカも食われずに逃げられるよう進化してきたためだ。そのため、ある一方が圧倒的な優位に立つことはできず、両者の関係は常にほぼ一定の水準を保っている。

 また、英国の童話「不思議な国のアリス」の続編「鏡の国のアリス」には、「赤の女王」というチェスの駒が登場する。競走の達人である赤の女王の国では、どんなに一生懸命走っても体が前に進まない。それは、周囲の世界も一緒に前に動いているからだ。そして、赤の女王はアリスに「その場にとどまっていたければ、全力で走り続けなければならない」と語りかける。

 この話から生物学の「赤の女王効果」という用語が生まれた。チータとカモシカのように、自然界の進化競争ではある方が一方的な勝利を収めることはできないことを説明する際に使われる用語だ。

 ところで、その場にとどまるためにすべての力を振り絞って走り、生き残るために絶え間ない変化と進化を続けなければならないのは、童話や動物の世界の話だけではない。ともすれば、常に追われるように生きなければならないのが人間の宿命だ。そして生存のため、常に走り続けなければならないのは企業や国家も同様だ。

 現代経済研究院は、最近の韓国経済が「中進国のワナ」に陥ったと主張する報告書を出した。韓国が先進国との1人当たり国民所得の格差を狭められずにおり、今後もこうした状況が続く可能性が高いという指摘だ。これは、一種の「赤の女王効果」のためだ。

キム・ギチョン論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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