彼女の名はハン・ヘギョン。誰もが驚愕するその容姿、その訳は病気でもなく、交通事故でもない。それはひたすら美を追求した一人の女性の悲しい結末の姿であった。へギョンは、1962年韓国ソウル郊外の町で生まれた。将来歌手になることを夢見て、高校卒業後、実家から約200キロ離れた町・チョンジュへ。昼は歌のレッスンに励み、夜はレッスン料や生活費を稼ぐためナイトクラブで歌う生活。
  
そんなある日、へギョンに転機が訪れた。それは日本での活動の話だった。当時日本ではチョー・ヨンピルやケイ・ウンスク等、韓国出身の歌手が活躍していた。その波に乗って、自分も成功を掴みたい!…と、新たな希望に胸を膨らませ、へギョンは日本へと渡る。しかし、そこで待っていたのは過酷な現実。与えられた仕事場は場末のスナック。デビューへの道ははるかに遠かった。
  
なかなか成功への糸口がつかめないことに焦りを感じる中、仲間の中にはチャンスを掴む者も…。やがてそれは、自分の容姿の問題ではないかと考え始めた。実はヘギョンは大きすぎるアゴにコンプレックスを持っていたのだ。このアゴさえスッキリすれば…。そして彼女は成功を手にする為に、闇医者の手がける整形手術を受けてしまう。あごを目立たなくする為に、頬にシリコンを注射し膨らませるのだ。その結果に彼女は大満足。自分に自信を取り戻した気がした。しかしその日から、彼女の恐怖の転落人生が始まっていったのだ…。
  
自信がなくなると闇医者を訪ね、シリコンを注入。繰り返すシリコン注射で、顔はお月様のようにパンパンに膨らんだ。へギョンは、いつしか整形依存症になっていたのだ。こうなっては店には置いておけない。こうしてヘギョンは韓国へ帰国。顔が大きくなったヘギョンに驚いた両親は、すぐにを病院へ。診断の結果、へギョンは整形に取りつかれ、精神的なバランスを崩しており、まずは精神科で治療をしなければならないことが分かった。しかし、へギョンの家には入院や手術に必要なお金がなく、家に連れて帰るしかなかった。
  
そんな両親の心配をよそに、ヘギョンはシリコン注入をやめられなかった。闇医者ですらシリコン注射を断るほどであった彼女は、自らの手でシリコンを注入した。購入したシリコンを使い果たすと、へギョンは何と食用油までも注入した。
  
その結果へギョンの顔は、注入された異物が組織の中に入り込み、肉芽腫となって異常な状態に。それは、地元テレビ局が取材にくるほど。そんなヘギョンの姿に韓国中が衝撃を受け、善意の寄付が集まった。こうして治療が受けられるようになったヘギョンは、顔から首にかけての異物を取り除く手術を1年で15回受け、取り出した異物は5キロ近くに。まだ完全に昔の顔を取り戻したわけではないが、幾分顔は小さくなった。そして現在、ヘギョンはひたすら過去を後悔しているという。
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