「大麻汚染」の拡散が止まらない。慶応大や同志社大など著名大学の学生らが大麻取締法違反(所持)容疑などで逮捕されたほか、芸能人や力士、プロテニス選手、歯科医など摘発対象者の範囲も広がっている。背景には、手に入れるだけなら規制されない「種子」のあり方や、他の違法薬物と比較して吸う際の心理的なハードルが低いなど、大麻特有の事情がある。若者を中心に深刻化する汚染の現状を追った。【武内亮、山本太一、高橋直純、山田泰蔵】
東京都世田谷区のマンション7階。「大麻を持っている」との情報で踏み込んだ警視庁捜査員は、クローゼットを開けて目を見張った。中には高さ40センチの大麻草25株が生えたプランターが並び、そばには照明器具などもある。その光景はさながら大麻畑だった。
「以前、種を海外で手に入れ、自分で使うために栽培した」。大麻取締法違反(所持)などの罪で起訴された俳優の加勢大周(本名・川本伸博)被告(38)は逮捕後の調べにそう供述したという。
近年、大麻の種を栽培して使うケースが急増している。警察庁によると、栽培行為で立件されたのは08年度上半期だけで91件73人。前年同期比で18件23人も増えた。背景にあるのは法規制の「限界」だ。同法は栽培を禁じているが、種の所持には罰則規定がなく、飼料用などとしては売られている。厚生労働省監視指導・麻薬対策課は「種に有害な成分がないから」と説明する。
JR渋谷駅近くの輸入雑貨店。大麻に関する書籍や吸引道具などが売られている。「シード(種)? 今は扱ってません」と店員は約1年前まで販売していたことを認めた。業界の事情に詳しい男性によると、種を売る店は最盛期には全国に約100店あったが、都内や大阪の輸入業者の相次ぐ摘発のため、姿を消したという。
2008年11月14日