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2008-11-14

図書館にBL小説リクエストすんなよ、常識的に考えて

堺市の図書館にボーイズ・ラブ本(以下BL本)が大量にあり、青少年の育成に悪影響を与えるとして問題視されている、というニュースがあった。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/10/news064.html

これに対し、BLファンと図書館関係者から議論が、というより擁護と反攻一辺倒の声が沸き起こっている……というのが現状。

同じ方向になびいているのが気持ち悪いので見かける先から中傷批判的なコメントを残していたらIDコールをいただいた。

http://d.hatena.ne.jp/machida77/20081111/p1

コメント欄がないので自ブログで書く。ま、噛み合わないことが分かっているから、反論ではなく、呼ばれたことをきっかけに自己の主張をまとめてみたい。


というか、反論はない。

図書館学の立場から、受入済資料に対する恣意的な検閲は認められない。その主張は一転の曇りもなく正しい。

受入の段階で検討すべきではあった。その選定方法についても(異論を持っているのだが)machida77氏の意見の方が明らかに正しいと認めざるを得ない。


で、正しいから何?

ある論理において完全に正しいことが、別の論理による批判を免れるわけではあるまい。


まあでも、図書館法と十進分類に基づく正義を掲げるライブラリアンに期待するところは何もない。分別は排除どころか分かりやすいのだが、闘争の歴史で勝ち取った勝利を守るためにゾーニングを断固拒否せねばならないのだろう。もう拠って立つ所が違いすぎる。

なのでこのエントリは、同じ所に立てると思っているBL好き、このニュースがあまり他人事でないオタク全般の方へ向けたつもり。


言いたいことは

ポルノレーベルの本を図書館にリクエストしてんじゃねえよ阿呆がww

ということである。

恥を知れよ、リクエストした腐女子(と通した図書館員)

ってことだ。

フランス書院美少女文庫や二次元ドリームノベルといった男性向けジュブナイルポルノをリクエストする漢はあまりいない(*)と思われる。

(*)もしリクエストがあっても図書館員が蹴っているのだとすると、BLとの扱いの差が問題になるが、この仮定は事実を確認しようがないので放棄する。なおアダルトゲームノベライズの『ONE』『Kanon』が見当たる図書館もあるので、男性向けジュブナイルポルノも皆無ではない。


なぜポルノレーベルが分かれているか考えてみればいい。

ポルノは一般のライトノベルとは別レーベルに峻別されている。売り場も区分される(隣であっても画別される)。

小説にはレーティング制度がない。ゆえにこれは自主的な棲み分けである。ポルノは直接的な性表現を求める読者が手に取るように、一般ライトノベルはそうでない読者が手に取るように、レーベルで区分されている。出版社と読者が作り上げた、すぐれた慣行である。

誤って間違っていやらしい本を手に取られては何かと問題もある。だから、間違えられないように、これはエロ本ですよ性的な本ですよ世間の目をはばかるジャンルですよ、というアピールをしているわけだ。まさにジャンルで全部十把一絡げに扱われるためにレーベルがある。

ところが図書館ではどうか。文庫913-アといった風に、他の小説と一緒に全部著者名順に放り込まれる。お互いの幸せのための自主的な区分が損なわれてしまうのだ。

かくしてBL本は、露骨な性表現を望まない読者に、あるいは共犯関係(*)の外にあるうるさ型市民に、「発見」されてしまう。「発見」された以上、元々は領域侵犯しないためのアイコンのひとつであるエロチックなイラストもかえって批判の対象となる。本は自ら位置づけを決める主体性を奪われ、排除せよ分離せよという外部からの不当なゾーニングの圧力に晒されることになる。今ここ。

(*)「いやらしい本だから見たくなければ見るなよ!」「OK見ない」と嗜好の差による棲み分けを認める程度には同好の士意識がある関係

これねえ、自発的にBL本を分ける配置がなされていたなら、BL本擁護側の立場に納得できる。しかし、記事を読む限り、非BLの小説と分けていないようだ。だったらそりゃ批判も受けるさ。受けて当然。


ポルノレーベルは隠微なものだ。口うるさい大人の目に触れないように隠せと書いてあるレーベルだ。そんなものを図書館に頼んでPTAのオバチャンの目に晒すなんて正気じゃない。リクエストした腐女子は、隠すべきBL本を自分からわざわざ図書館という一般人の目につく場に晒し、問題を引き起こしに行ったに等しい。

既にある蔵書だというところから話を進めれば「なんかいろいろ権利の侵害だ!」「BLを馬鹿にされた!」という論になる。

そうじゃない。問題はもっと前にある。

リクエストした腐女子当人たちの常識のなさ。ちゃんと区分されている露骨な性的表現を、区分が行われない公共の場に投げ出したという、それが問題。

BL好きはなぜこの恥知らずたちを批判しないのだろう。

男のオタクは、一般人の前に露出して偏見を助長する同業者を結構批判的に見ているものなのだけど。


一般に快く思われない趣味を持ったマニアとして、露出は極力避けるべきだろう。

(露出して社会に認めさせるという考え方もあるだろうから、そういう積極的な意図を持っているのなら止めないが……)

露出は無用な攻撃を受けることに繋がる。

BL本をリクエストした腐女子は、戦略的に誤った行為に出たと言える。

これはうまくなかったと言いたい。


今回の騒動に先述の編集長は「BL本をリクエストしたことが驚き」と苦笑する。


 「昔は親の目を忍んでコソコソ見るもので、表現も今ほど過激ではなかった。モラルに締め付けられるほうがかえって萌えあがることもあるんですがね」(同)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/10/news064.html

kazu氏kazu氏 2008/11/14 14:18 はじめまして。同感です。一部の趣味の方に文句はありません。個人の楽しみですから。ただ、それを公共の図書館に要求する神経はちょっと疑いますね。いくら、あれはエロではない、恋愛小説だ、と主張されても、多くの方はそれを認めない。それを認めないという事実を、腐女子の方が認められないのであれば、やはりいつまでも社会に適合できない方々だと思うのです。どんな理論を通されても違和感をおぼえる。それが無関係な人のシンプルな感覚だと思います。

y_arimy_arim 2008/11/14 14:24 うーん。
BLの場合、ライトノベルレーベルとそれ以外(これだってけっこう中間領域は多い)ほど明確には、ポルノレーベルとして差異化されていない気がします。
たとえばコバルト文庫なんてのは歴史ある少女小説レーベルですけれども、ある時期からBL作品が増えて、最近はまた旧来の少女小説が主流になりつつある、なんて感じらしいです。ほんとにBL専門のポルノレーベルってのはあんまりないみたいで。
ぼくは10年前以前の福岡とそれ以降の首都圏の一部くらいしか知らないのですが、一般書店でもライトノベル-少女小説-BL小説はたいていシームレスに配列されています。手に取ったらBLだった! ということがけっこうある(さらに言うと、それがきっかけで腐ってしまったというひとも少なからずいるようです)。
自主的な区分自体、あんまりはっきりと存在せず機能してもいないのではないか、と考えます。そうなると、Thscさんの主張を通すには、「ポルノレーベルのBL」と「非ポルノレーベルのBL」といういささか不自然な線引き(レーベルの違い以外に質的差異があるのか? というのが問題)をしなければならなくなる。
だったら、そもそもライトノベルだろうが少女小説だろうが、ジュヴナイルレーベルを図書館にリクエストなどするな、くらいまで話を広げなければならなくなってしまいますが、これまた非ジュヴナイルレーベルのそういった小説も存在する、という問題が。

まあ難しい問題ですが、図書館を含む行政側からは、別に有害じゃねえという判断が下されていてある意味決着してはいるんですよね。書庫行きにはなったけれど廃棄はされていませんし。
そのあとのBL擁護はたぶん、別の話。

ちなみにぼくは男性オタクですが、フランス書院だろうと二次元ドリームノベルズだろうと、一切の選別なく図書館に置かれるべきだと考えています。実際、図書館側では「ポルノだからダメ」という基準は一切設けていないとのことですし。

ゲスト


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