【社説】大統領夫人のいとこの事件、単純詐欺ではない
李明博(イ・ミョンバク)大統領夫人の金潤玉(キム・ユンオク)さんのいとこにあたるキム・オクヒ容疑者が、ハンナラ党の比例代表名簿に登載されるよう便宜を図る見返りとして、ソウル市バス運送事業組合の金鐘源(キム・ジョンウォン)理事長から30億ウォン(約3億2200万円)を受け取ったとされる事件について、検察が捜査を開始してから7日で丸3週間が過ぎた。しかし現時点で何も明らかになっていないことから、新たな疑問ばかりが浮かび上がっている。
まず理解できないのは、キム容疑者が金理事長から30億ウォンを受け取り、その後そのカネを自分の口座に入金したとされる時期だ。問題の30億ウォンは今年2月5日、25日、3月7日の3回に分けて、小切手でキム容疑者に手渡された。検察によると、この30億ウォンはその後キム容疑者の口座に入金されたが、最初の10億ウォン(約1億700万円)はハンナラ党の公認候補が発表された3月24日前に、残りの20億ウォン(約2億1500万円)は公認候補発表後に口座に入金された。その後、キム容疑者はこの中から25億4000万ウォン(約2億7245万円)を再び引き出し、4月初めから中旬にかけて金理事長に返したという。
問題は、キム容疑者が金理事長の公認脱落を知ってから、20億ウォンもの大金をなぜ自分の口座に入金したのかという点だ。公認からの脱落により、この20億ウォンを入金した時点では、そのカネを金理事長に返すべき状況にあったはずだ。にもかかわらず小切手を自分の口座に入金したというのは、キム容疑者が金理事長からカネを受け取った、という証拠を残す結果にしかならない。そのため次のような疑惑が浮かび上がる。つまり、キム容疑者は金理事長から受け取った小切手を何者かに手渡したが、公認を受けられなかったことで、キム容疑者はその人物から小切手を返されたのではないかということだ。
キム容疑者には、ハンナラ党の公認を受けさせる見返りとして、金理事長以外の人物に対してもカネを要求していた疑惑もある。今年1月にソウル市議会のある議員に対し、「大韓老人会の支援で比例代表に出ることができる」として話を持ちかけた事実が確認されており、それ以前にも現在親朴連帯(朴槿恵〈パク・クンヘ〉前ハンナラ党代表を支持する同党離党組)に所属する政治家に対して同じような提案を行ったが断られたという。検察はこれら公認を取り巻く疑惑が取りざたされているにもかかわらず、選挙関連の捜査を行う公安部署や権力型汚職を捜査する特捜部にはこの問題を担当させず、今も金融租税調査部に任せている。
検察がキム容疑者に対する逮捕状を請求する際に適用した容疑も「詐欺」だった。事件が詐欺として処理されれば、30億ウォンを手渡したとされる金理事長は被害者となり、処罰を免れることになる。これでは検察が金理事長の口封じのため、このような方向で捜査を進めているのではないか、という疑惑も当然浮かび上がってくるだろう。
今回の事件は何よりも大統領の親せきが関与しており、また選挙における党の公認問題で数十億ウォンもの資金が動いた事件だ。このような性質の事件であるからこそ、検察はほかの事件より何十倍も厳しく捜査を行う必要がある。現政権発足後としては初めて大統領の親せきが関与するこの事件に対し、国民は日々大きな関心をもって見守っている、という事実を検察は心に留めるべきだろう。
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