亜鉛メッキ鋼板のカルテル事件は、鉄鋼業界のなれ合い体質をむき出しにした。住宅用などの建材だけに、一斉値上げは生活にも響き、悪質だ。刑事・行政両面の追及で“悪弊”を根絶させたい。
価格カルテルとは、業者が集まって商品価格の引き上げなどについて、内密に取り決めることだ。当然、市場原理のメカニズムは働かず、公正な競争が阻害される。独占禁止法で禁じられている。
公正取引委員会が刑事告発し、東京地検が家宅捜索したのは、建材向けの亜鉛メッキ鋼板メーカーである。
日鉄住金鋼板や日新製鋼、淀川製鋼所、JFE鋼板の四社間で、カルテルを結んだ疑いである。もっともJFE鋼板は、最初に公取委に不正を自主申告したため、告発を免れている。
二〇〇六年春ごろに「一キロあたり十円の値上げ」を合意したというが、当時で約10%の値上げに相当する。住宅の屋根などに使われる鋼材で、板金店などに向けた「店売り」で不正があったとされている。零細企業は直撃を受け、消費者にも跳ね返るだけに許されるものではない。
国際的な亜鉛価格が急上昇を始めた事情が、事件の背景にあったと推測される。だが、原材料費の上昇分を商品価格に転嫁する際には、通常、コスト削減や効率化などの企業努力が伴うものだ。
問題の鋼板で四社のシェアは約90%である。カルテルを結び、一斉値上げして、寡占状態を維持すれば、明らかな価格支配である。関係企業は事態を重く受け止めるべきだ。刑事捜査とともに、課徴金など行政処分をにらんだ公取委の徹底調査を望む。
鉄鋼業界全体を見ても、問題の根は深いと言わざるを得ない。〇三年にはステンレスで、〇五年には橋梁(きょうりょう)談合事件の鋼材で、今年六月にも土木用鋼材で独禁法に触れる不祥事が相次いでいるからだ。反省の念を深めてもらいたい。
〇六年から独禁法が改正され、不正を“自首申告”した企業に対する課徴金の減免制度が始まった。すでに二百件以上の申告の実績がある。談合やカルテルの“密室”は、暴かれつつある。
欧州連合(EU)では旭硝子など四社が板ガラスで、米国でもシャープなど三社が液晶パネルで、それぞれ巨額な制裁金や罰金を受ける。価格カルテルをとがめたものだ。そろばん勘定でも、割が合わないはずだ。もはや古い慣習は通用しない時代だ。
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