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社説:迷走・麻生首相 解散から逃げたツケは重い

 発足から2カ月もたたないというのに麻生内閣は目に余るほどの迷走ぶりだ。麻生太郎首相は米ワシントンで14日始まる金融サミットに出席するが、深刻な金融危機に対応するには政治のリーダーシップが不可欠だ。果たしてこんな状況で乗り切れるだろうか。

 混乱の象徴は定額給付金問題だ。首相は当初、全世帯への給付を明言したが、与謝野馨経済財政担当相が所得制限が必要との考えを示したのを機に二転三転。政府内で綿密な調整もせずに、その場の思いつきで発言しているのではないかと疑わせるものだった。

 そして揚げ句の果てに制限を設けるかどうかを含め、給付の窓口となる市町村に判断を任せるという。

 毎日新聞は目的も効果も不明確な今回の給付金は白紙に戻すべきだと主張してきた。首相は、この丸投げについて「地方分権なんだからよろしいのではないですか」と語ったが、それを聞いてあぜんとしたのは、混乱の尻ぬぐいを押しつけられた地方関係者だけではなかったろう。

 さらに重大なのは、定額給付金を含む第2次補正予算案の成立を今の国会では見送るとの声が与党内に強まっていることだ。

 国会会期は今月末まで。野党が徹底抗戦すれば、予算関連法案まで成立させるには参院が否決したとみなす「60日ルール」を適用したうえで衆院での再可決が必要となる。この場合、会期は来年1月末まで大幅延長しなくてはならないが、与党内では、この厳しい日程に慎重論が強いという。

 首相はどうするつもりか。「政局より政策」を理由に衆院解散・総選挙を先送りしたにもかかわらず、今度は政策の実現も先送りするというのだろうか。政策を見直すならともかく、それもせずに早々と国会を閉会すれば、それこそ政治空白というべきである。

 元々、一連の経済対策は骨格だけを大々的に発表して解散・総選挙に突入し、具体的な詰めは選挙後に検討するというのが、首相をはじめ与党の戦略だったと思われる。ところが、「勝てる保証がない」と首相は総選挙を回避。そこで大あわてで詰めてみたら、ほころびが次々と出てきたというのが実相だろう。

 このほか、首相は道路特定財源のうち1兆円を地方に配分すると明言したが、1兆円は地方道路整備臨時交付金(約7000億円)と別枠か、それを含めた配分か、閣僚の間でも食い違ったままだ。

 あいまいな発言を繰り返す首相には与党内にも不満が出ている。政策の整合性を検討しなくてはならない官僚側にも白けた空気が漂っているといわれる。

 私たちは自信を持って政策を実現するためにも、総選挙で国民の信を問うべきだと再三主張してきた。やはり、解散から逃げたツケは重かったのである。

毎日新聞 2008年11月14日 東京朝刊

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