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社説

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海外臓器移植―「仲介」の実態を明らかに

 専門医のきちんとした紹介がないまま海外に出かけて腎臓や肝臓などの移植を受ける。そんな事例が後を絶たない。そこに介在するのが、渡航先の病院に橋渡しをする個人や団体だ。

 移植を受ける一人ひとりの患者には切実な願いがあるに違いない。それでも、こうした海外移植が広がることには問題が多いと言わざるを得ない。国際的にも厳しい目が注がれている。

 厚生労働省の研究班が2年前にまとめた報告も、その一端を浮き彫りにしている。医師が紹介したものも含め、少なくとも過去に522人が心臓、肝臓、腎臓の移植を海外で受けた。注目されるのは、腎臓を移植された198人の渡航先の1位が中国、2位がフィリピンで、ほかにもタイやインド、パキスタンなどの名が並ぶことだ。

 背景には、これらの国々の貧しい人々の存在がある。生活に困り、二つある腎臓の一つを売って金をもらおうとする人が少なくない、といわれる。

 中国では死刑囚の遺体から摘出した臓器が多く使われたとの報道もある。

 海外移植を考えるとき、そうした現実から目をそらすわけにはいかない。

 移植のためのこんな渡航は、患者や家族の口コミに加え、インターネットの普及で広がったといわれる。だが、医師を通さず、仲介業者頼みでは不安も大きいだろう。渡航先の医療水準などをつかみにくく、手術後のケアが不十分なまま帰国する人もいる。

 費用面の不透明さもぬぐえない。

 そもそも、臓器の売買はしないというのが移植医療の大原則だ。

 日本の臓器移植法も、臓器提供やそのあっせんで利益を受けることを禁じている。だが、必要経費の名目でもうけを得ている業者がいるのではないか。そんな疑いは消えない。

 どんな団体が、どんなやり方で仲介しているのか。提供者をどうやって見つけ、手術費用や謝礼のやりとりはどうなっているか。政府は徹底的に実態を調べてほしい。

 最近も、中国で仲介をしていた団体の日本人代表が移植をめぐる虚偽広告の罪に問われ、現地で有罪判決を受けたことが話題になったばかりだ。

 海外移植が広がる背景には、国内の臓器提供が少ないことがある。

 日本では、脳死後の臓器提供が諸外国に比べてきわめて少ない。日本臓器移植ネットワークに登録して、提供者が現れるのを待っているうちに亡くなる人も多い。1997年に臓器移植法が成立したが、法の施行以来、脳死移植も80例足らずにとどまる。

 移植をしやすくするために条件を緩めるなどの改正案が国会に提出されているが、たなざらしのままだ。

 多くの人に納得ずくで移植医療を受け入れてもらうためにも、まず不透明な海外移植の実態解明が急がれる。

カルテル横行―罰則強化の法改正を急げ

 業界内の企業が謀り合って販売価格をつり上げれば、買い手は高値での購入を余儀なくされる。こうした「カルテル」行為は独占禁止法違反であり、悪質な経済犯罪である。

 最近、日本企業もかかわる大規模なカルテル事件の摘発が内外で相次いでいる。憂慮すべきことだ。

 米司法省がおととい、パソコンや携帯電話に使われる液晶パネルのカルテルで、シャープなど日韓台のメーカー3社が罪を認めたと発表した。

 欧州委員会も今週、自動車用ガラスのカルテルで旭硝子など日欧の4社に制裁金の支払いを命じた。摘発された企業の中には、昨秋にも建設用板ガラスのカルテルで課徴金支払いを命じられたところがある。

 こうした部品についてのカルテルの結果、携帯電話や自動車の販売価格も高くなっていたとしたら、多くの消費者も被害者ということになる。

 国内でも、住宅の屋根などに使われる亜鉛めっき鋼板でカルテルがあったとして、公正取引委員会が大手3社を検察当局に刑事告発した。価格カルテルでの告発は17年ぶりとなる。鋼板を仕入れる板金店のような零細企業は、仕入れ価格をつり上げられても工事代に転嫁しにくい。結局は板金店がコスト増を負担しなければならなかった。

 このような行為を防止するには、企業に「カルテルは割に合わない犯罪」だと思わせるだけの、抑止力のある罰則が必要だ。その点、日本の罰則はまだ軽すぎるのではないか。

 今回、米国でシャープなど3社が支払う罰金の総額は、米国で過去2番目の大きさとなる5億8500万ドル(約560億円)。欧州委が4社に命じた制裁金も、過去最高の総額13億8千万ユーロ(約1700億円)だった。

 日本では、罰金(上限5億円)と課徴金(大企業は違反対象売り上げの10%)の二本立てだが、二つを合計しても、こうした巨額の制裁を科す欧米に比べてまだまだ安い。

 公取委は米欧にならって、企業がみずから違反を当局へ通報すれば処分を軽くする「課徴金減免制度」を導入した。この制度は鋼板カルテルの摘発などで効果をあげている。効果をさらに高めるためにも、罰金・課徴金を大幅に引き上げた方がいい。

 世界経済はこれから景気の後退が進むだろう。苦しくなった企業や業界が価格カルテルに走る恐れも高まる。国際的に連携してこれを防止することは、いまの経済混乱を鎮めて市場経済を安定させるためにも必要だ。

 主犯格企業の課徴金の割り増しや時効の延長を盛り込んだ独禁法改正案を政府が国会に提出しているが、棚上げされる可能性が強まっている。さらに罰則を強化することを検討しつつ、早期の成立をめざしてもらいたい。

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